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レディアイコ(ミンナノアイドル18)スペシャルレポート

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茨城県のスピリットファームにて育成が進められているレディアイコを取材する運びとなったが、台風12号の接近などでなかなか予定が組めずにやきもきした。台風の進路が東海上にそれたおかげでスピリットファームが居を構える牛久市は直撃を逃れたため、馬場は若干荒れているものの、9月下旬にうかがう運びとなった。東京を出発してしばらくは雲ひとつない秋晴れだったのが、利根川の周辺で濃い川霧が発生しているのを見て不安にかられつつ、流域を離れたら再び快晴に。ところが、牛久市へ近づくにつれてみるみる濃い霧に包まれてしまう。例年、この付近では9月から10月にかけて頻繁に霧が発生するそうで、屋外コースでは向こう正面どころか何も見えない日もあると聞いて驚いた。最悪の状況ではないらしいが実に口惜しい。

懸念した通りスピリットファーム周辺も濃い霧の中に沈んでいたが、気をとりなおして厩舎へと向かった。レディアイコの馬房をのぞくと、寝ワラの上に座ってリラックス中だ。馬房で休んだりうたた寝する際も立ったままが多い馬もいれば、しょっちゅう寝ワラに座ったり横たわったりするタイプもおり、本馬は後者のようだ。あまりにも気持ち良さそうなので、特別に裏戸を開けてもらって撮影した。トロンと安心しきった表情が実に愛らしい。スピリットファームの明智善雄社長は「これ、疲れてるわけじゃなくて、普段から馬房でよく寝るんです。飼葉食べたらまた寝たり、また気が向いたら起き上がって食べたりとか。とにかくよく寝てますね」と教えてくれた。

そうこうするうちに、調教の時間が近づいてきた。当日騎乗したのはフィリピン人スタッフのトトさん。来日してから15年ぐらいになるという、頼れる騎乗スタッフだ。調教準備のためトトさん自らが馬装するのだが、彼が口笛を吹くと、寝ワラに座っていたアイコがすっくと立ち上がるではないか。毎日繰り返しているルーティンワークとはいえ、聞き分けの良さ、賢さを感じさせる。次々に馬具をつける間も、イヤな顔ひとつせず、実に大人しい。生まれ故郷の佐藤牧場にいたころにはワガママで反抗的なところもあったので、育成に入ってからの精神的な成長を実感した。

さて、馬装が終わろうとするタイミングで、取材をサポートしてくれるスタッフの高橋久幸さんが現れた。口笛ですぐに立ち上がった話をすると「ボロを拾ったり寝ワラを入れ替えたりするときも、自分から立ちますね。すごく扱いやすいですよ」と教えてくれた。続けて「ただ、普段は馬房でも洗い場でもこんなふうに大人しいんですけど、乗ると変わるんですよ。ほかの馬と一緒にいれば大丈夫ですが、1頭だけになると気合が入ってカッカカッカしちゃう。物見したりして入れ込んじゃうこともあって、まだまだ子供です。調教ではメンコを着けてできるだけ落ち着かせるようにしています。とはいえ、ペースを抑えたり上げたりさせる鞍上の扶助に対してはとても素直に従ってくれますし、もうちょっと大人になってくればまったく問題ないと思います」と話す。

取材当日の調教メニューは1周800mの屋外ダートコースをハッキングキャンターで2周、キャンターで3周した後、ゲート練習というもの。まずは厩舎エリアからスロープを下って屋外ダートコースへと向かう。撮影が難しくなるものの、霧の中を歩む姿は幻想的で美しい。スロープを下りきったあたりから一層濃くなった霧の中、調教がスタートした。コースの手前側3分の1ほどはかろうじて見えるが、それより奥に行くとほとんど目視できないのが悔しい。しかしながら、同じグループで調教している僚馬の中で、ひときわバネの利いた動きと美しいフォームが目を引く。薄手な馬体ながら、その動きははつらつとしてしっかりしており、いかにも運動神経が良さそうという印象なのだ。時折、ペースが遅いからか「もっと速く走りたい」とばかりに頭を上げたりする場面も見られたが、むしろ前進気勢の強さをうかがわせて頼もしい。

調教を見守る高橋さんに本馬の長所をうかがうと、「スピードがありますね。他馬と並走してる時にカーッときた時などの加速が良いです。今はまだ後ろから来られるのを怖がっていて逃げるという感じですが、それが前向きになって勝負根性になってくれれば。フォームも良いですよ」と教えてくれた。明智社長も「素軽そうな感じだし、動きは良いと思います。騎乗スタッフに聞いても、身体の緩さもないし、しっかりしてるということだから、速いところを始めればスピードの乗りは良いと思いますよ」と評する。しばらくはしっかりと基礎固めをしつつ精神面および体力面の成長を待ち、それからペースを上げていけば、ストライドも伸びてきそうだと思わせる動きなのだ。高橋さんも「たしかに気性面の成長と体力がまだ物足りないですね。飼葉を食べるのも遅くて、ゆっくりゆっくりです。ローレルリーベはガブガブガブッて勢いがすごいけど、この仔は女の子らしいという感じです」と話す。「今はちっちゃい割にはバランスが良いし、かっこうも良いです。これから牝馬らしくトモもグッと張りが出てくれればいいですね。全体的にもうちょっと肉付きが良くなってほしいです。精神的な面もあってなかなか太れないのかもしれないので、もっと落ち着いてくれば身体もふっくらしてくると思うんですけど」と、薄手ではあるもののバランスの良さやきれいなボディラインについても評し、分析してくれた。馬体および精神面の成長を待って強い調教が始まったら、動きの良さはさらに際立ってくるに違いない。

コースでの騎乗調教を終えた本馬は、僚馬1頭とともに練習用ゲートへ向かった。明智社長が間近で様子を見つつ、トトさんに細かく指示を与える。最初は戸惑うこともなくすんなりと入り、大人しく駐立していたが、何度か繰り返すうちにゲート内で頭を上げるようなそぶりが見られた。明智社長は「何度も繰り返していると気が入ってピリピリしてくるのと、最後のほうはゲート脇の坂路を上がってくる馬もいたせいでしょう。でもゲートの中には入りますから」と解説。聞けば、本馬がこちらへ移動してきてからゲート練習を始めてまだ1週間しかたっていないという。当初は前扉がなく一番幅が広い4番ゲートですらじっとしていられず、立ち上がって転倒しそうになったほどだが、徐々に狭いゲートへ、そして通常の幅で前扉がある1番ゲートへと順を追って訓練されてきた(今は毎回4番と1番を通っている)。1週間でここまでの進歩が見られたのはすごいのではとうかがうと「大人しい馬なら1週間ぐらいで試験に受かるなってレベルになりますけど、この馬はすぐに大人しくなって覚えるというタイプではないので、たぶん時間がかかるんじゃないかな。でも、中にいるのが怖くてうるさくなる馬は、ゲートが開いたら出が速いタイプが多いんですよ」と教えてくれた。

ゲート練習を終えて厩舎に戻った本馬は馬装を解かれ、体重計に向かった。嫌がる様子もなくすんなりと入って駐立し、計測後は洗い場でシャワータイムだ。口の左側から舌をペロンと出しては引っ込め、たまに舌を出したままで首をかしげるという仕草を見せる。その表情がものすごく愛らしいのだ。思わず、不二家のキャラクターであるペコちゃんを思い出した。母も、牧場に来る人間は自分を見にくるのだと思っていたアイドル気質だったが、本馬の可愛らしさはA級で、二代続いてのアイドルとなる資質充分。高橋さんに「この仔は人間が大好きで…」と話しかけたとたんに「そうそう!」、「可愛いですよね?」「そうそうそう!」と、満面の笑みで勢いよく相槌が返ってきた。

さっぱりと洗ってもらい馬房に帰った本馬を観察しつつ、立ち写真撮影のため濡れた身体が乾くのを待っていると、少し前までは暗くたれこめていた霧がみるみるうちに薄れ、強い日差しが戻ってきた。飼葉桶に首を突っ込んでしばらく食べたと思うと、裏戸から外を眺めたり、舌を出しては首をかしげている。取材に同行したクラブスタッフが裏戸ごしに馬体のあちこちをチェックしていると、スタッフの頭が動くほうに自分も顔を寄せて匂いを嗅ごうとする様子が、またカワイイ。いずれトレセンに入ってからも、きっと担当厩務員をはじめとする厩舎スタッフに可愛がられることだろう。これまで取材した活躍牝馬たちを思い返すと、厩務員との好相性や濃密な信頼関係、極論すれば「愛してもらっている」ことが、レースで頑張る気力に繋がっているのではと思わせる例が多くあった。愛されるキャラクターであることも、競走馬としての資質の一部ではないかと思っている筆者にとって、本馬が見せてくれた可愛らしさが嬉しくてたまらない。

観察を続けていると、明智社長が再び現れて本馬の飼葉食いについて教えてくれた。「最初にモゾモゾモゾって食べて、しばらくは遊ぶんです。また落ち着いて気が向いたころに飼葉桶に首を突っ込んでモゾモゾモゾって、それの繰り返しだから時間がかかりますよね。ほかの馬はバーッて30分や1時間ぐらいで食べちゃうけど、これは3時間とか4時間かかる」と苦笑する。その解説通り、本馬が飼葉桶を離れて、しばらくしたら再び食べはじめるところを目の当たりにした。けっこうな頭数を管理する育成場で、これほど細やかに管理馬の様子をチェックする代表の方は少ないと思うし、取材のたびに調教内容だけでなく馬房での日常まで教えてくださることに感謝している旨を伝えると、「性格です」とこともなげに答える明智社長にあらためて感服した。

しばらくすると、立ち写真撮影のためにおニューの頭絡を着けた本馬が姿を現した。芦毛の馬は毛ヅヤが目立たない馬が多い中、こんなにピカピカな芦毛馬はまれではないか。この毛ヅヤは代謝の良さのたまものだろう。そして、グレーと茶色と白が混ざった被毛で覆われた馬体に、真紅がよく似合う。その姿を見てあらためて感じたのは、やはり細いというより薄手、ということだ。横から見る限り、脾腹が巻き上がっているわけでもなく、スレンダーな良い馬体と感じる。「上が軽い分だけ脚元への負担がかからないということもあるけど、脚元が丈夫だと思います。レースには400kgぐらいで出ることになるかもしれないけど、能力があればそれぐらいの馬でも勝ち上がってるのがけっこういるし、何より気性が前向きだから。牝馬はこれくらい気が乗っているほうがいいかもしれない」と明智社長が評する。

長兄ストリートキャップは、デビューしてからも馬体が充実していき、490kg台まで増えた。馬体成長の余地を多く残しているからこそ、本馬も長兄と同じような成長曲線を描いてくれるのではないだろうか。

「レディアイコには、出資会員の皆さんのためにも頑張ってほしいですが、オグリキャップの貴重な血脈を次世代に繋ぐという大事な役割があるので…」と筆者が話しかけると、「実は、オグリと縁があるんですよ」と明智社長が答える。1987年にニューマーケットへ赴いてキャリアを積む前まで、オグリキャップの近藤俊典オーナーの弟である近藤俊征氏が当時代表を務めていた浦河町のヒダカファームに在籍していた明智社長は、オグリキャップの優勝記念品として作られた馬蹄形の18金製ネックレスを貰ったことがあるというのだ。装飾品は結婚指輪すら着けないタイプなので家のどこかにしまったままだというが、オグリキャップとの関わりがあるとうかがい、出資者とオグリファンになり代わって「よろしくお願いします!」と思わず最敬礼した。

最後に、既出資会員や出資を検討中の会員さんに向けてメッセージをお願いすると「スピードがありそうだから短いところの競馬だと思うんですけど、デビューして2戦目3戦目で良いところを見せて勝ち上がれると思いますよ。最初からある程度走るんじゃないかな」と、明智社長から嬉しい評価を貰えた。まずは順調なデビューと持てる能力を十二分に発揮できることを、そしてオグリキャップの血脈を繋いで広げてくれることを切に願う。