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アニージョ(アニムス19)スペシャルレポート

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今月、本稿の主役を務めるのはアニムス19。調教取材に先立ち、本馬の生産者にして自ら育成を行なっているグランデファームの衣斐浩社長にお話をうかがった。「この仔が生まれる時は大変でした。身体が大きかったため、母がいきんでもいきんでも出てこず、出産までかなりの時間がかかったのです。母はその時の疲労度がかなり大きくて体力を消耗しましたし、子宮にも相当な負担がかかってしまったようで、その年はなかなか種付けができなかったし、結局は止まらなかったのです。幸い、翌年は何とか受胎してくれましたが、この仔には母が空胎となってしまった分も含めて大きな期待を持っているし、私の望みをかなえてくれるような馬に成長しつつあると感じています」と当時を振り返って語る。

そんなグランデファーム社長は、血統に深い造詣を持ち、独自の配合理論を提唱していることでつとに有名だ。まずは、血統についての持論をうかがってみた。「私が長年考えてきた理論を駆使し、毎年夢を持って配合相手を検討しています。同じ配合をしても同じ馬が生まれる事はないのは承知していますが、配合とはいわば馬の設計図のようなもので、生まれる前から『こういう馬を作りたい』という明確なイメージを描きつつ考えているのです。長年にわたって配合検討に携わってきましたが、これまでにマチカネフクキタル、ウイングアロー、サウンドスカイ、レーヌミノル、ワイドファラオがG1/JPN1を制してくれました。さらに、本馬と同じ父ケープブランコの産駒ランスオブプラーナ、2020年はワイドファラオ、エーポス、サウンドキアラが重賞制覇を遂げています」と、そうそうたる活躍馬の配合に関与してきた実績をこともなげに話す。

これだけの結果を出し続けている配合理論は、どのようにして生まれたのだろうか。「血統については、16歳の頃からなので、かれこれ50年近く勉強し続けています。私は厩務員の息子として生まれ、高校時代から笠松競馬場で調教をつけながら通学する毎日を送りました。母の親は馬主をしていましたが、なかなか成績が出ませんでした。なんとか走る馬を持たせたいと思っていた時に、獣医師の松本思郎さんから『海外で良績を挙げているNative Dancerはどうやってできているか判るか?』と血統配合について聞かされたのをきっかけに興味を持ち、血統の勉強を始めて今日に至ります。その後にもメジロアサマやサクラショウリ、シンボリルドルフの父パーソロンなど、多くの名馬について配合を調べました」と社長が教えてくれた。

ご自身の生い立ちと血統に対する興味を持つに至ったきっかけを興味深く聞くうち、いよいよ本馬の母であるアニムスの血統背景へと話題が移る。「アニムスの母ヒシアニマの配合が気に入って、この只者ではない血統の繁殖牝馬を所有者さんから無理を言ってトレードしてもらったのです。そのきっかけが、『パーソロンはどうやってできているか』に関係しています。ヒシアニマの父Sinndarは、モンジューを破って凱旋門賞馬になった馬で、とても魅力的でした。Sinndarの血統背景をひも解き、すべての説明を文章にするにはスペースが足りないと思うので、概要だけでも…」という社長のお話をまとめてみた。

Sinndarとパーソロンは近代のサラブレッド血統に大きな影響力を持っている同じ母系の出身です。Sinndarの5代母は2×2の強烈な全姉妹クロスを持っており(図1)、パーソロンの祖母(図2)とほぼ同じ血統構成になる。さらにパーソロンの曾祖父Djebel(その父Tourbillon)はSinndarの3代母の曾祖父である事から、パーソロン(図2)とSinndarの3代母Stoyana(図1)も同じような配合になっているのだ。この強烈なクロスを持つパーソロンやSinndarの血統は、たとえクロスさせなくても存在するだけで、とてつもない大物を出してくるそうだ。さらに、Sinndarの母の祖父Mill Reefの父Never Bendの母Lalun(Mill Reefの父母)の父Djeddahは、図3のようにDjebel×Djezimaで、こちらも全姉妹クロス3×4の絶妙なクロスが入っており、Sinndarの母は『Djebel-Tourbillon-Durban-Durbar×Banshee、Djezima-Asterus×Heldifann-Durbar×Banshee』の多重クロスを持っている。Sinndarがヒシアニマの母アニマ2と出会う事でMill Reefがクロスされ、ケープブランコの祖父Sadler’s Wellsの母父Bold Reasonの母Lalunと出会って、再び上記『 』の多重クロスが増幅され、爆発的に走る産駒が誕生する確率が高くなるのだという。

まさにサラブレッドの歴史を感じさせる特別な配合が、偶然ではなく理論的に行なわれている。「血統オタク」にとってはゾクゾクするほどすごい内容で、前置きされた「概要だけでも…」という言葉は、どこに行ってしまったかというほど、話に熱が入った。あまり血統に詳しくない読者のためにも、「ヒシアニマからは現役4勝馬のバーンスター、近親からはピルサドスキーやファインモーションのG1馬が出ています。Sinndar産駒のターキーからは3勝馬スペチアーレ、ムーンライトダンスからは6勝馬ムーンリットレイクや現役3勝馬ヒュッゲなど、日本での数少ないSinndarの血から活躍馬を輩出しています」と、本邦成績を解説してくれた。

また、アニムス19の父であるケープブランコについて、「Sadler’s Wells系でカーネギーに似た配合の個性があり、種牡馬としても母の父としても価値が高いと考えています。ただ、その価値を見出せないままで時が経過してしまっている。ですが、私の配合論からすれば、きっと成功すると信じています」と熱く語る。新馬勝ちを決めた兄グランデルカクや、配合に携わり毎日杯(G3)を制したランスオブプラーナ以上の期待をアニムス19には持っているのだ。

続いて話題となったのは、Specialの母系クロスだ。「今、世界で一番走っている配合といっても過言ではないのが“Specialクロス”です。血統表を見ていて見つけた瞬間に私が◎を打ってしまうクロスであり、日本ではエルコンドルパサーがSpecialクロスを持つ活躍馬の始まりだったと記憶しています。近年ではサートゥルナーリア、リオンディーズ、レッツゴードンキ、ゴールドドリーム、デアリングタクトなど、日本でもG1馬がこのクロスを持っています。それ以上に欧州で怒涛の勢いを見せており、Galileoからは英二冠馬でG1を4勝したラヴ、英ダービー馬ルーラーオブザワールド、英オークス馬フォーエヴァートゥギャザー、作年の凱旋門賞馬ソットサス(母父)が、Sadler’s Wellsからは母父としてワークフォース、欧州マイルG1を4勝したヘンリーザナビゲーター、仏二冠牝馬ディヴァインプロポーションズ、父父としてキャメロットなど、GalileoやSadler’s WellsでのSpecialクロスは、2000年代に入ってからはG1馬を出さない年はないのではないかというほどです」とのこと。アニムス19の五代血統表にあるSpecialのクロスにも、ぜひご注目いただきたい。

「配合を考慮する際は、いつも『フランス凱旋門賞を勝てる馬を作りたい』という夢を持って、常にクラシックディスタンス向きの配合を行なっています。これまで会員さんの期待に応えられないことも多々ありましたが、ローレルクラブからの凱旋門賞挑戦を真剣に夢見て、日々努力をしています。そんな大きなことを、と言われるかもしれませんが、世界チャンピオンホースを作るのが目標なのです。また、熟慮の末に選んだ配合は必ず2回以上繰り返し、1回だけで見切りをつけることはありません。シンボリルドルフだってキタサンブラックだって、全きょうだいでも走らないことがあるのですから。クラブ募集馬を提供するにあたり、本当に良い馬をと思っていますし、その選んだ馬を信じて、会員の皆様と夢を見るだけでなくかなえたいと思っているのです」と真剣な面持ちで語ってくれた。衣斐社長の信念と長年にわたって続けている努力を思うにつけ、その大きな夢をともに見たいと強く思った。

事前取材を終えてから数日後、グランデファーム本場にて研鑽を積むアニムス19を訪ねた。BTC内の屋内坂路を駆け登る本馬を見つめつつ、「兄グランデルカクと比べて明らかにフットワークが軽快で素軽い動きをします。今日、クラブスタッフが場内の端にある凍った地面で滑ってひっくり返っていましたが、実はグランデルカクが当歳の頃、同じように転ばしてしまい、左の腰を悪くしたのです。結局、それが影響して大成できませんでしたが、それでも将来性を感じさせる走りで新馬勝ちしてくれました。兄は重厚な馬体をしており、重たい馬場でかなり走ると期待していたのですが、この仔は兄よりはるかに馬自体の軽さがあるので、芝でも走れると思っています。大きくゆったりとしたフットワークからすると、配合の目論見通りに長めの距離が合いそうです」と話してくれた。

多数の馬主や生産者、トレセン関係者から深く信頼されて競走馬の育成や管理を任されてきたグランデファームは、調教に関しても豊富な経験則に裏打ちされた方法論や信念を持っている。「速い調教にいった時のバネを想像しながら、馬の能力を見極めていくように心がけています。でも、2~3ハロン程度のスピード調教では、その馬が持つ本当の能力は測りえないと最近は思えてきました。それでなければ、うちが育成したバビットをあの安価な値段で手放すはずがない」と苦笑する。そのバビットはわずか540万円で落札されたが、2度の重賞制覇を果たして1億1千万円超の賞金を稼ぎだしているのだ。

では、早期から馬の能力を見極めるためにはどうしたらいいのだろうかとうかがってみた。「BTCで4ハロン以上の距離でちゃんとした追い切りが行なえる大きな馬場は、屋外1600mダートトラックです。しかし、2歳春という成長段階にある馬にダートコースで4ハロン以上をフルギャロップで走らせると、馬へのダメージが大きすぎて故障してしまう可能性が高くなります。2歳馬の早期デビューが盛んなホッカイドウ競馬の門別競馬場にウッドチップ坂路コースができてから、さらに2歳戦での強さが目立ってきましたが、馬の基礎体力が必要十分ではない状況で春先にダートトラックコースのレースで走らせると、馬がガタガタになってしまってその後に活躍できなくなるというケースをよく聞きます。そんな状況を改善するために、勾配を確保した1600m以上のウッドチップ坂路コースを作ってほしいとBTCに常々要望しています。これがあれば、馬にとって安全な状態で能力を見極めきれる態勢になると考えているからです。そうすれば、グランデファームから提供するローレルクラブへの募集馬は、ある一定以上のレベルまで成績が上げられるはずです。当社の経営方針のひとつに『馬を通じて社会に貢献し、喜びと感動を分かち合います』と掲げているように、会員の皆様に喜んでもらえるようになるだろうと考えます」という社長の答に驚かされた。確かに、馬は競馬場で実際に走ってみなければ能力は判らないという関係者の言葉をよく耳にする。それを覆す方策を実際に提言したのだ。

「そんなわけで、現段階でのアニムス19の能力判断は、私の“勘”の部分が多いです。それでも、全体的な雰囲気、顔つきやピリッとした眼つき、歩き方や走り方などから見て、走らない馬ではないはずだと思っています。2019年産馬については、これまでの調教方法とは少しやり方を変え、1歳のうちは場内の広い角馬場でしっかりと基礎を作りました。走るペースは遅くてもしっかりと体力も付いているので、年明け早々からBTCの屋内ウッドチップ坂路2本を20秒程度で軽く足慣らしを始め、1月下旬にはすでに15-15近くまで進んでいます。走りの雰囲気も良いし、利口で鞍上によく従いますが、まだ闘争心は出ていないので、併せ馬でやる気を出させている段階です」と社長は話す。

育成方法に加えて、飼養管理にも心をくだいているという。「うちで食べさせている飼葉は、日本の大手牧場の栄養管理を担当しているアメリカの馬栄養学者デュレン博士の指導を受けています。育成馬は当然として、母の胎内にいる時から生産馬の栄養管理を行なっているわけです。そのおかげもあって、骨がしっかりとした仔が生まれていますし、母馬もどえらい元気(笑)。気に入った血統の繁殖牝馬をよその牧場から購入して生産する場合も、購入以前とは違う仔出しになってくれていると思うので、これからがとても楽しみです。毎日、自分で全馬のボディーチェックを行なって飼葉の内容や量などを調整してきている成果を、早く皆さんにお見せしたいです。そういう馬づくりをしています」と語る表情は、自信に満ち溢れていた。

グランデファームは冬季の夜間放牧なども積極的に取り組んでおり、走る馬を作るための研究と努力を続けているが、兄のグランデルカクのようにそれゆえの事故で馬を駄目にしたこともあるという。デビューを目指す多くの馬たちがさまざまなリスクを抱えながらも日々鍛えられている。そんな状況下でも「無事これ名馬」という菊池寛の造語のように、大きな故障や頓挫なく育つのは、「名馬」なのだ。衣斐社長の「走る馬というのは、多かれ少なかれ良い運勢を持っていると感じます。この仔がここまで順調にきているだけでも、すでに良い運を持っていますし、ローレルクラブさんとの縁をいただけたのも運です。その縁と良運を大事にしながら、このまま進んでいきたいと思います」という言葉に深くうなずいた。これからも本馬の持つ運を信じて応援し、ともに夢を見ていきたい。

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