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モール(ダンシングロイヤル19)スペシャルレポート

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モール(ダンシングロイヤル19)に会ったのは2月のとある日。彼は引き続き浦河町の吉澤ステーブルで調教を積んでいる。筆者が牧場へ到着すると、モールは馬房で馬装している最中だった。馬房を覗いてみると、落ち着いた様子でスタッフにじっと身を預けており、時折ひょうきんな顔をして、笑いを誘う余裕もあった。

馬装を終えたモールは、多頭数の集団で牧場内にある屋根付き馬場にてウォーミングアップを行なった後、BTCのコースへ移動した。この日のメニューは屋内ダートトラック1200mと屋内ウッド1000m坂路1本の調教というもので、モールは集団の先頭を力強く駆け抜けていった。集団の一番前にいながら物見をすることなく、首差しを弓のようにしならせて走り、立ち姿以上に馬体を大きく見せた。えこひいきするわけではないが、併せ馬をすると、蹴り上げるチップの量が隣の馬よりもずいぶん多かった。2歳になったばかりの幼い時期ながら、途中で騎乗スタッフが声を荒げて叱咤することもなく、行儀よく調教を終えた。

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さすがはゴールドシップをはじめ、エポカドーロ、ビッグアーサーといったG1馬を育成した牧場とあって、抜かりなく、手間をかけて馬を作っているのだろう。近年、馬の売買が盛んな事から、育成牧場はどこも馬房が一杯で、実績ある吉澤ステーブルに預けたくても預けられない馬も多数いると想像する。大阪桐蔭野球部のユニフォームみたいに、吉澤ステーブルの黄色い馬服を着用しているだけで、どの馬も強そうに映る。

本馬の近況について、マネージャーの鷲尾健一さんは、「体力がしっかりついてきましたし、順調に進んでいますね。1月から1ハロン18秒、2月からは1ハロン15秒を出し始めました。気性は前向きで、まだトモは緩さがありますが、一生懸命走ってくれます。重心の低い走りはモーリスの産駒らしく、スピードのある走りは母の父サクラバクシンオーの遺伝もあるでしょう。時折、鞍上に反発する面や怖がりなところもありますが、そうした特徴をふまえてじっくり向き合っています。こちらの要求を理解し、慣れてくれるように」と話す。会員の皆さんが注目するのはこの「 」の部分だろうから、太字で印刷して欲しいぐらいだ。

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さかのぼって、モールは一昨年の3月31日に生まれた。少し横道にそれるが、同じ誕生日を持つ馬には、ヴィクトワールピサ、カレンチャン、クロフネ、シーザリオ、ヒシミラクル、モズアスコットなど、多くの名馬がいる。会員の皆さまには、この中に1頭ぐらい、思い入れのある馬がいるのではないだろうか。

モールの父モーリスは2018年に245頭と交配しており、そのうちの1頭が本馬の母ダンシングロイヤルだ。種付けをしたのは4月30日だったから、最も種付けが混んでいた頃のはずだ。筆者の頭に浮かんだのは「種付け繁忙期は、付けたい日に種付けできる枠に入るのが難しい」ということ。人気種牡馬になればなるほど、1日に何頭も交配希望馬が入る。1日に種付けをこなせる頭数は2、3頭で(昔は多かったが)、希望するタイミングに種付けできるとは限らず、現実は競馬ゲームのようにはいかない。そういう視点から考えると、モールは生まれる前から運があったと思うし、無事に受胎が確認できた時は、牧場の皆さんは深く安堵したに違いない。生産現場に入るとより生々しく実感するのが、競走馬というのは種付けからすでに戦いが始まっているという事なのだ。

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モールの生まれ故郷は新冠町の村上欽哉牧場。せっかくモールの特集が組まれたのだから、筆者の知る限り同牧場について触れてみたい。馬産地には「村上」という苗字の方が複数いるので、地元では「欽哉さん」と呼んでいる人が多いように思う。土日にJRA開催の競馬新聞を読むと、生産者欄で欽哉さんの名前をよく見かける。それも午前中のレースだけでなく、午後のレースでも頻繁なのだ。生産牧場ランキングでは、2016年からずっと30位以内をキープしており、現在ざっくりと700の牧場が稼働していると考えれば、相当高い順位である。昨年を例にとれば、個人名の牧場(そうした名義はたいがい中小規模の牧場)では最上位だ。

開業して約15年でこれだけの成績を残している事から、地元では欽哉さんに対して「仕事のできる人」とリスペクトする声をよく耳にする。過去にはあのディープインパクトの仔も生産している。それも1頭だけではないのだから、日高の中小牧場では稀有な存在だと思う。預託馬であれ自己所有馬であれ、昔だったらサンデーサイレンス、近年ならばディープインパクトの仔をとった事のある牧場は、ある程度の高い実力や信頼があるからこそだろうし、牧場の暖簾の輝きを示すひとつの物差し、KPI (業績評価指標)みたいなものだと思える。ちなみに、筆者が最近見た動画で、欽哉さんのお子さんが、両親の真似をするように、大人しい繁殖牝馬の曳き運動を手伝っている様子が映っていた。お腹の膨らんだお母さん馬を相手にしっかり手綱を握り、立派に馬をリードしていた。ほほえましくもあり、村上さん一家の頑張りを垣間見る事ができた。

さて、再びモールのいる舞台、吉澤ステーブルでの話に戻してみる。鷲尾さんによれば、3月からは15-15の調教を重ねていくという。すでに13秒台を叩き出しているほどだから、余力を持って15-15を走れそうだ。春になればBTCの屋外コースが開放され、使用コースのバリエーションも増える。アジア最大級の調教施設・BTCの本領発揮だ。「今までは屋内馬場中心でしたが、春からは外のコースに連れていけるので、そこでの調教でまたパワーアップを期待できますね。ゲート練習も加えていき、躊躇なくゲートに入れるように繰り返していきます」と鷲尾さん。浦河で桜が咲く頃には、モールはますます競走馬らしい姿になって、BTCの広いコースを力走していることだろう。走りながら、生まれ故郷の自然豊かな環境を思い出すかもしれない。

「入厩した頃から“しっかりした馬だな”という印象がありましたし、順調な成長曲線を描いています。この感じなら夏競馬デビューを目指していけますね。初年度産駒から実績を出しているモーリスの産駒でもありますし、スパッと新馬勝ちを決めたいですね」と鷲尾さんは力強い言葉で締めくくってくれた。

お話を聞いている限り、早くから動けそうだという感触を得る一方、改めて血統表に目を転じてみれば、ノーザンテーストのクロスが浮かんでいる。同じクロスを持つウインブライト、オルフェーヴル、クリノガウディー、ドリームジャーニー、ノブワイルド、レインボーラインなどの例からすると、成長力があり、古馬になっても活躍が期待できそうだ。血統的には、モールは決して早枯れすることなく、馬主孝行な競走生活を歩んでくれるのではないだろうか。母の父サクラバクシンオーで有名なのはキタサンブラックだが、キタサンブラックは成長がスローで、2歳秋まで新冠町の日高軽種馬共同育成公社でじっくり鍛えられた。デビューは年明け3歳の東京競馬だから、モールのように2歳2月に速い時計は出していなかっただろう。個体差はさておき、2歳春の時点で15秒台を出す馬は多数いるように思われるかもしれないが、ここまで頓挫する事なく順調な過程を歩めたのは、当たり前というわけではない。キャリアのある会員の方なら、うなずいてくれるのではないか。

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さて、記事の終わりが近づいてきた。特に壮大なエンディングはない。生き物であるサラブレッドの毎日は、ドラマというよりはドキュメンタリーだ。「半沢直樹」というよりは「カンブリア宮殿」寄りだろう。記事に少し記した通り、馬を知るには健康状態や成長具合、性格、環境、血統、関わっている人々、施設、運…などのあらゆる情報が重要だろうし、それが馬の能力のエビデンスとなるかもしれない。今回の情報が少しでもお役に立てば幸いだ。もっとも、こんなふうにつらつらと書いておきながら、馬を買う・選ぶにあたって「理屈ではない」という理由もはずせない。そういう考えも大いにアリだし、個人の自由だと思うと強調しておきたい。

馬は不思議な生き物で、時に人間の想像を軽々と超えてくる。馬券も、思い込みやデータだけでは万馬券を得られない。だから、考えに考え抜いて“全集中”で選ぶ・選ばないも勿論よしだし、「なんとなく気に入ったから」という漠然とした理由で選ぶことも、全然いいじゃないかと思う。結果はどうなるかわからないのだ。少し違うかもしれないが、前号の会報誌で、グランデファームの社長が“勘”について触れていたように、言葉にできないような感覚やひらめきは、生き物の世界において大事な要素であろう。

モールについて「あら、なんとなく良いような気がしてきた」と思えるエピソードは、この特集ページ内にたくさん散りばめられていると思う。本稿が皆さんの武器となる“勘”を呼び起こしてくれたら、筆者にとってこのうえない喜びだ。

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