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ギンザヴィクトリア20スペシャルレポート

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北の大地では、秋が駆け足で深まっていく。10月中旬、木々や草の葉が色付き、すでに落葉しているものも目立つ。身が引き締まるようなひんやりとした空気に包まれながら、日高町の白井牧場内に居を構えるヤシ・レーシングランチを訪問した。

本稿の主役であるギンザヴィクトリア20は、新冠町の日高軽種馬共同育成公社内・パッショーネで馴致を終えて屋内ダートコースを普通キャンターの調教までを消化。その後は馬体の充実とリフレッシュを図って生まれ故郷の新冠橋本牧場へ一旦戻った。それからヤシ・レーシングランチへ移動して、本格的な育成を開始している。

新冠橋本牧場でのリフレッシュ放牧では、馬体中が20kgも増えるという目覚ましい馬体成長を見せた本馬。八嶋代表は「うちに来た当初こそ少しふっくらしすぎているかなと思いましたが、運動を進めても体重が減ることはなく、むしろ微増しながら筋肉も付いてきて、馬体成長がさらに進んでいます。今、うちの育成場で特に意識しているのが、運動負荷・食事・休養からなるトライアングルを、いかにバランスよくするかといいうことなんです。この3つのバランスをうまくとることで、馬の成長を阻害せずに育てていけるんですね。当たり前かもしれませんが、基本に戻ってこの3つをいかに効率よく行なっていくかを大切にしています」と教えてくれた。たしかに、競走馬を育成するのみならず、デビュー後の競走馬を調整するうえでも、運動負荷・食事・休養のバランスこそは、基本中の基本と言えるだろう。

ヤシ・レーシングランチの基本理念であるトライアングルに加え、本馬にはもうひとつの「トライアングル」が関わっている。それは、生産した新冠橋本牧場、初期馴致を行なったパッショーネ、そして現在本馬を管理・育成しているヤシ・レーシングランチだ。八嶋代表も「パッショーネさんでの馴致、新冠橋本牧場さんでのリフレッシュは、運動負荷・食事・休養のトライアングルがうまくかみ合って著しい馬体成長に繋がったと思います。加えて、人の繋がりのトライアングルが見事に噛み合ってくれたら、最高です」と話す。

新冠橋本牧場社長も「この馬は血統的には奥手の馬ですが、幼いながらも身体がしっかりとしていたので、早い時期から育成を進めていける、いこうと思って牧場で身体造りをしていました。成長度合いによっては、それができない馬もいる中で、この馬は期待に応えてくれ、しっかりと鍛えることができたと思っています。本当は馴致からヤシさんにお願いするつもりでしたが、馬房の都合で移動する事ができず、ヤシさんを通じてパッショーネさんに馴致をお願いしたという経緯です。お互いの信頼関係があるからそれも面白いと思い、皆さんの力をお借りしてここまできました。これからも成長を楽しみにしています。でも、本当に身体が完成するのは古馬になってからだと思っているので、早い時期に勝ち上がって、長い期間活躍してくれる馬になってくるとイメージしています」と話す。

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本馬の馬体については、「身体の成長は進んでいるものの、まだ全体的な骨格などは幼く、キ甲はまだぜんぜん抜けていないので、背中のラインなどはおうとつが少ないです。そんな状況でも、今の時期にこれぐらいの調教を課してもオーバーワークにはなっていないので、基礎がしっかりとした馬だという印象を持っています」と八嶋代表が続ける。取材時点では、1000m屋内坂路で週2回18~17秒ペースのキャンター調教や、角馬場のような自由馬場で8の字を描く基礎運動や大木を跨がせる運動を消化している。八嶋代表によると「大木は3本並べて跨ぐだけではなく、軽く飛び越えるような運動も取り入れています。自由馬場での運動はこれまでのどの世代でも行なっていますが、大木を使った段差などの障害物を越す運動は、馬と騎乗者の意思疎通を図るうえで効果があります。去年からはこれまで以上に重要視して取り組んでいるところです」とのことだ。続けて、「以前は、これまで積み重ねてきた経験則というか、人の感覚を信じて育成を行なっていました。『男は感覚!』みたいなプライドだったかもしれません。でも、某大手育成牧場の方から聞いた話しなどを参考にして、去年あたりから調教後に血液検査を行って乳酸値を測定したり、自分たちだけでなく、アドバイザーとなってくれる方にボディーチェックをしてもらったりと、科学的な根拠や第三者の意見も参考にしています。『男』から『中性』になったんですかね」と照れ笑いしながら話してくれた。

「乳酸値については、すでにほかの育成場でも取り入れているところがありますが、数値が大きければ、現状の調教では負荷が大きすぎる(オーバーワーク)、逆に小さすぎると負荷が足りない(有効な運動が課せられていない)と、数値で判断できます。その数値は、自分が騎乗する際に馬の動きや息遣いから感じる感触と大体一致するんですが、今やっていることが正しいという指標になっているのが心強いですね。でも、ちょうど良い、または余裕を持って走れていると感じていても、オーバーワークの数値が出る時もあるので、そのあたりが数値で判断できるのは助かっています。正直に言うと、今まではこういうやり方を馬鹿にしていた面もありましたが、感覚だけでなく科学も取り入れることで、皆さんの大事な馬がより一層無理なく順調に成長できるならば願ってもないと考えをあらためました」と真剣な面持ちで続ける。

「乳酸値を測ることで自分なりに解ってきたのが、馬の距離適性を判断する基準です。短距離に適性を持つ馬は、同じメニューの調教を課しても長距離馬より乳酸値が高く出る傾向にあるんです。ゆっくりのペースだと判断が難しいのですが、休養で来た現役馬に強めの調教をおこなった時の数値で発見できました。かなり期待していた馬がおり、短距離血統なので芝の短い距離を走らせていたところ、まったく結果が伴いませんでした。ところが、休養時の数値がかなり低かったため重い馬場の長い距離向きではと思い、関係者と相談してその条件を使ったら、1発で勝ち上がったんです。また、長距離タイプのオープン馬のクラスになると、やはり乳酸値がほかの馬とは違い、全然数値が上がらないなど、かなり興味深い結果が出ています」というエピソードをうかがい、驚いた。科学的根拠が血統から推察される距離適性をひっくり返したのだ。古臭いオヤジ言葉かもしれないが、いわゆる「勘ピューター」と科学的要素が合わされば、鬼に金棒ではないか。

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そんな八嶋代表に、あらためて本馬の適性についてうかがうと「歩様がやや固めでピッチ走法ぎみなので、血統通りのスピードタイプでしょう。今の時点ではマイルぐらいまでに適性がありそうな走りをしています。気性的にも前向きで、ほどよいぐらいの前進気勢を出してくれるのは、うまく精神面を馴致してこられた結果だと思います。もちろんうちだけの手柄ではなく、新冠橋本牧場さんやパッショーネさんで、人との約束事などをしっかりと教え込まれた賜物ですね」と話してくれた。

今後の予定については、「11月から中1日の週3回坂路で17-16まで進め、12月には3ハロン45秒15-15-15を目指します。乳酸値などの状況も見極めながら、無理をさせすぎることなく進めますし、これまでの様子からすると十分に予定をこなしていける馬だと思います。昨年までは、特に深い意味もなく、年末最後に1本だけ15-15を行なって正月休みに入るという目標で進めてきましたが、今年からは12月中に15-15を8本程度こなしてから休みに入る予定です。これは3本線のトライアングルを念頭に置いて、人間の都合である休みをいかに有効に利用して負荷をかけるかを考えたプランです。日々の小さなトライアングルとは別に月単位の大きなトライアングルを意識し、調子が上がって15-15まで進めた調教をすぐにやめていたのを、継続して負荷をかけてから休みに入り、じっくり回復、というような意識で進めたいです」とのことだ。

「今のイメージとして、北海道開催からデビューできるのではないかと感じています。幼いながらもすでに馬体の芯があるし、走りもしっかりとしています。これはパッショーネでの馴致、新冠橋本牧場でのリフレッシュ、うちでの育成という大きなトライアングルが成功した証ではないでしょうか。幼い身体つきの今ですら十分な動きなのに、来年の春には身体がもっと成長して、はるかに良くなるだろうという感触があります。会報の特集取材をこの早い時期にやるのはもったいない。春になったら、あらためてその成長した姿をリポートしてほしいぐらいです」と熱い言葉が止まらない。「これまでローレルクラブさんの馬でパッとした成績を出せていないので、なんとかこの馬でと思っています。近年はトレセンへ移動した後の評価も調教師さんたちに満足していただけている馬が増えていますし、会員の皆さんにもさらなる信頼をもらえるように努力したいです。感覚に頼るだけではない新しい育成方法によって、成績を出せるようにがんばります!」と結んでくれた。実際、ヤシ・レーシングランチが手掛けた今年の2歳世代には早くも新たな方針の効果が出てきており、育成馬16頭中半数がすでに掲示板以上の戦績とまずまずの結果が見られる。競走馬の育成・管理に関わる基本要素のトライアングルと、新冠橋本牧場・パッショーネ・ヤシレーシングランチのトライアングルのクロスに感じ入りつつ本稿を執筆した。しかし、執筆が終盤に入ってから、成長後の本馬には所属厩舎・騎手、そして休養や調整をになう牧場というトライアングルも加わるではないかと思い至った。これから造り続けられる三つのトライアングルによって本馬がどのような成長を遂げ、そして活躍してくれるか、楽しみでならない。

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