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ティノ20スペシャルレポート

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「99.9って何?」と思われた方も多いのではないだろうか。これは、つい先ごろ追加募集が決まった本稿の主役であるティノ20が、日々研鑽を積んでいる育成牧場の名前だ。「キュウジュウキュウ テン キュウ」ではなく、「ナインティーナイン ポイント ナイン」と読ませる。会員の皆様にとっておなじみのNo.9ホーストレーニングメソド(以降No.9HTM)を営む木村忠之社長の長男である木村拓己氏が、2021年8月に独立して開業したのが99.9なのだ。

拓己氏にネーミングの由来をうかがうと「No.9HTMの名前から9を貰いました。父の牧場名は、父のラッキーナンバーが9であることと、馬と9で『うまくいく』という語呂合わせから付けられたんです。たとえば、僕の生年月日は平成9年9月29日、弟が9月6日、嫁さんが9月1日、父自身も9月30日と、家族は9月生まればかりで、9に縁が深い家系なんです」と教えてくれた。これほどずらりと「9」が並ぶとは、ラッキーナンバーとしての重みが並外れている。

続けて「僕の経営理念は、『固定観念を持たない』ということです。100%ではなく、99.9%のギリギリまでは詰めていきますが、残りは何事も決めつけずに柔軟に対応できる気持ちを持てるように心がけたいと削ったのが0.1%です。100頭の馬がいれば、100頭それぞれにベストなやり方があるはず。容易なことではありませんが、その仔その仔に合わせた方法を考えていくという理想を持って、馬や人と接していきたいです。関わってくれるすべての方や、馬たち、そして自分たちの基本的な99.9%の努力に柔軟性の高い0.1%を加えて、100%の結果に繋げていきたいと考えています」と熱く語る。

そんな拓己氏の思いをうかがいながら、ふと思い出した。彼は、JRAが主催するポニー競馬、「ジョッキーベイビーズ」の初代チャンピオンだった。グリーンチャンネルで放映されたその雄姿を覚えている人も多いだろう。ふっくらした頬の可愛らしい少年が、見違えるようにたくましくなって日高・浦河に戻ってきたのだ。しかし、これまでの道のりはけっして平坦ではなかったという。しばしの間、拓己氏のショートヒストリーにおつきあい願いたい。

「生まれた頃にはすでに父が育成牧場を営んでいたため、常に身近に馬がいる環境で育ちました。小学1年生の頃から浦河町のポニー乗馬少年団で馬乗りを楽しんでいたんです。チェスナットファームさんの長女と同級生だったので、団長を務めていたチェスナットファームの広瀬代表には幼少期からお世話になっていました。小学5年生からはJRAの乗馬少年団に入ってサラブレッドの騎乗も始めたんです」というエピソードだけでも、ホースマンになるべくして生を受けた方なのだと感じ入った。

その後は、6年生時(2009年)に「第1回ジョッキーベイビーズ」へ出場。予選を勝ち抜いて北海道地区の代表となり、全国大会決勝で東京競馬場の長い直線コースを先頭で駆け抜けた。決勝戦には現騎手の木幡巧也もいたという。優勝者インタビューでは「夢はジョッキーになることで、目標とする騎手は三浦皇成騎手です」と話しており、その後に同騎手の妻となったほしのあきさんがプレゼンターであったことを知ってか、少年時代から「空気が読めるオトコ」だったのかもしれない(笑)。中学1年生までが出場できるジョッキーベイビーズは、JRAが全国各地で乗馬に励んでいる子供たちにとっての夢舞台として主催している。第1回目出場者からは木幡巧也騎手、2回目からはカナダで活躍する福元大輔騎手が出ており、3回目に出場した弟の和士氏は昨年カナダで138勝を挙げて日本人初の海外リーディングジョッキーに輝いた。第3回には兵庫競馬で活躍中の永井孝典が、第5回には斎藤新、松本大輝、菅原明良が、第6回には角田大和、そして第7回には横山琉人、永野猛蔵と、多数の有望な若手ジョッキーを生み出しているのだ。

単なる「夢」ではなく、優秀なホースマンの登竜門といえるジョッキーベイビーズを制覇した拓己氏はその後も乗馬に励み、中学3年生の時には「ぎふ清流国体」にも出場。その後は日程が迫っていたため、岐阜から千葉県白井市のJRA競馬学校へ直接移動して試験を受け、無事入学したという。JRA競馬学校騎手過程の同期生には、木幡巧也をはじめとして坂井瑠星、藤田菜七子、菊沢一樹らが顔をそろえていた。実技では同期生の中で抜きんでた技量を持っていた拓己氏だが、当時はかなりのやんちゃ坊主だったらしく、それが原因となって自主退学を余儀なくされた。その後は、南関東・船橋競馬の矢野義幸厩舎と張田京厩舎で約7年間調教助手として勤務。矢野厩舎では年度代表馬となったサミットストーンやレガルスイ、張田厩舎ではワールドリング、ジョエル、先日の京成盃グランドマイラーズを優勝したスマイルウィなどに調教をつけた。

その間、NARの騎手試験にも何度か挑戦したものの、過去のやんちゃが影響したのか合格できず、シンガポールなどでも競馬騎手を目指したという。しかし、新型コロナウイルスが世界規模で蔓延しはじめて海外への渡航が困難になったため、ついにジョッキーという夢を諦めて、「腰痛で毎日の騎乗が辛い」という父のもとへ戻ってきたのだ。

そして、弟の和士騎手がカナダで見せる活躍に噴気した拓己氏は、父が営むNo.9HTMを手伝いつつ、自らがこれまでに培った人間関係でのサポートを受けて牧場を立ち上げるに至った。今では少年時代のやんちゃぶりを微塵も感じさせない好青年である。そんな拓己氏が率いる99.9は、父のNo.9HTMに隣接する厩舎を使用して、No.9HTMの預託馬と99.9の預託馬を合わせ、およそ70頭の2歳馬の育成を受け持つ。ちなみに、腰痛に悩んでいた父・忠之氏は、息子の開業を機に馬上から降り、拓己氏のサポートに徹しているという。

さて、競馬直前の育成馬につける調教と、時間と手間をかけて優秀な競走馬にするための育成は、かなりの違いがある。「うちで育成を始めたのは、ティノ20の世代が初年度になります。競馬場では、レース出走に向けた仕上げがメインで、馬が0.1秒でも速く走れるように鍛えたり、走り方を教え込むのが仕事でした。1頭の馬と接する時間は牧場と比較するとかなり短いので、教育するという感覚は少なかったように思います。イメージとしては、一緒に戦っているような感覚ですかね。速く走るために馬をどれだけやる気にさせるか、興奮させるかが主で、気持ちをONにする方向ばかりでした。対して、育成牧場では1頭の馬と関わる時間が1日単位でも月や年単位でも長いので、1頭1頭の気持ちを理解しながら接する点が大きく違うと思います。馬がどう感じているかなど、競馬場にいる時はあまり考えようとしていなかったのかもしれません。人の要求を馬に理解してもらえるよう、いろいろなことを教えながら一緒に生活している感覚ですかね。気持ちをONにするのはもちろん大事ですが、それだけではなくOFFにすることも馬の生活や成長に重要なので、切り替えができるように一緒に生活していきたいです」と話してくれた。

前置きが長くなったが、ティノ20についてお話をうかがった。「母ティノの産駒とは、この仔よりひとつ上の兄(ビッグアーサー産駒)が初の出会いとなります。生産・育成された恩師のチェスナットファーム広瀬代表から依頼を受けて、トレーニングセールのリハーサルと当日の追い切りに騎乗しました。いかにもビッグアーサー産駒らしくすごいパワフルで、良い馬だなと思いましたし、リハーサルでは1番時計を叩き出したんです。セリ当日の追い切りの感触も素晴らしくて、終えた後は大興奮でした。その時からティノの仔には注目していて、広瀬代表から下にサトノアラジンの仔がいると聞いていたんです。翌年の1歳馬のセリに上場すると聞いたので、うちで購入して育成を行ない、動きが良かったら、恩師と同じようにローレルさんでお世話になろうと考えました」と話すように、まずは兄に惚れ込み、弟である本馬の資質を確かめたうえでの提供となったのだ。

「セリで購入した時はまだ小柄で、男馬にしてはやや華奢な感じだけど、バランスがとても良くて自分好みの馬でした。育成を進めるにつれて、父サトノアラジンや母ティノと同じように芝向きな動きをすると感じたので、ローレルさんへの提供を決めました。子供の時から乗馬などでお世話になって大好きな広瀬代表と同じように、自分が育てた馬をたくさんの会員さんが応援してくれる競走馬に育てるというのが、僕の夢でもあるんです」と目を輝かせる。「ティノ20は運動神経が良いので、馴致はとてもスムーズに進められました。1カ月ほどでBTCの坂路に入れられましたし、その後も順調で、昨年の12月には坂路で15-15まで進めています。正月にリフレッシュさせて、年明けからは距離を乗り込んで基礎体力を付けました」という説明からは、本馬の身体および学習能力の高さが伝わってくる。3月に入ってからはスピード調教に進めており、3ハロン40秒、3月下旬には終い2ハロンで追い切りを実施できるまでに進んでいるという。「まだ後肢に緩さが残っていて、特に左トモにもう少し力が付いてきてほしいですね」と評するものの、本馬の動きを見る限り、拓己氏の評価は競馬場での感覚に近いのではないだろうか。調教を取材した筆者には、むしろこの時期の育成馬としては十分すぎるほどの動きに見えた。

精神面については「性格はかなりの悪ガキ、やんちゃ坊主といった感じですね」と話すように、BTC内を移動しながらも飛んだり跳ねたりと元気がありあまっている。しかも、ゲート練習後には、何が気に入らなかったのか、後ろにいた馬にわざわざ近づいて後ろ蹴りをお見舞いしていた。この様子では、競馬場では間違いなく尾っぽの付け根に赤リボンが着けられることだろう。

そんな本馬を見つつ、拓己氏は「こんなところも可愛いんですよ。幼い表情で、目がクリンクリンしていて、まるでぬいぐるみみたい。馬房でも、噛む、蹴る、立ち上がると三拍子そろったやんちゃ坊主なんですけど、調教ではすごく前向きで頑張り屋さんなんです」と目を細める。その微笑みは、まるで過去の自分と重ねて見ているかのようだった。だが、やんちゃさだけでなく身体能力の高さやひたむきな前向きさも拓己氏に似ていると思わせる本馬ならば、競馬場で立派に成長した雄姿を見せてくれるに違いない。

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