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ゴージャス(サトノジャスミン22)スペシャルレポート

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気温の上昇とともに雪解けが進んだ牧場草地は、例えゴム製の長靴を履いていても足を踏み入れることを躊躇するほどだが、馬装を終えたゴージャスは一切ためらうことなくそのぬかるみの中を突き進む。いつものように鞍上にはヤシ・レーシングランチの八嶋雄太社長を迎え、その八嶋社長が「この仔のことなら彼女に聞いてください。1番詳しいです」と全幅の信頼を寄せる原田由紀さんがゴージャスに付き添っている。純白の馬体が春の穏やかな陽射しにまぶしい。そんな何気ないワンシーンにも春の訪れを感じることができる。

この日の調教メニューは、屋内丸馬場で十分なウォーミングアップを重ねたのち1周1000mダートトラック周回コースを2周半。そして最大傾斜角度3.5%という全長1000m屋内坂路を1本、最後にゲートを通過するというもの。「たぶん大丈夫だと思うのですが、屋外のコースを使えるようになってまだ日が浅いから物見をするかもしれません」と原田さんが話す。聞けば、ゴージャスことサトノジャスミン22がここへと移動してからずっと世話を担当しているという。

当日、人馬が不慮のケガをしないようにと撮影クルーの案内役をかって出てくれた原田さんは、馬産地や競馬とはまったく無縁の環境で生まれ育ったという。にもかかわらず、「もともと動物は好きでしたが、馬に関する知識がまったくありませんでした。だから、逆に興味が湧いてきて」と見ず知らずの馬産地に飛び込み、それから幾つかの牧場で経験を積んでキャリアを磨いたというホースマンだ。そして半年ほど前にヤシ・レーシングランチの門を叩き、以来、貴重な牧場スタッフとして、その情熱を馬に注いでいる。

馬を扱う上で大切にしていることは「馬との関係性」だという彼女は「ゴージャスに対しても、白毛馬ということをなるべく意識しないで接するようにしています。でも、少しでも汚れると目立つので手入れが大変なんです。そんな時だけは、他の馬と少し違う毛色だという事を嫌でも意識させられます」と、柔らかいまなざしを向けながら馬に寄り添っている。

「この馬も、特別な目で見なければ、いたって普通の馬で、人間に対しては従順というかじゃれてくるようなかわいらしい子です。ただ、少しだけ気が強くて、嫌なことは納得するまで嫌だという女王様キャラも持ち合わせています」というのが原田さんのゴージャス評だ。物言えぬサラブレッドとはいえ「特別扱いしない」という彼女のスタンスは、もしかしたら、これまで特別な目を向けられ続けてきたゴージャスにとって、安らげるものだったかもしれない。馬装の邪魔にならないように注意しつつそんな話を聞いていると、突然思い出したかのように「この子、食事の邪魔をされると本当に怒るんです」といたずらっぽく笑った。

やがてウォーミングアップを終えたゴージャスが、僚馬とともに周回コースへと入ってきた。手綱を取った八嶋社長は、実戦を想定しているかのようにキックバックを受けそうな位置で我慢することを教えている。前を行く僚馬が、そして自身の脚元から跳ね上げられる雪泥が純白の体に襲い掛かる。それは、これから一切の言い訳が許されない厳しい世界へと旅立つゴージャスにとって、避けては通れないような儀式にも見える。

すっかりお馴染みになった重心の低いフォームに力強さが加わり、ぬかるんだコースにもバランスをまったく崩すことなく与えられたメニューをこなしていく。時計にすればハロン17~18秒くらいだろうか。当たり前のように見えるかもしれないが「洋芝はむしろ得意だと思うけれども、いわゆるダート馬的なパワータイプの馬ではない」というゴージャスにとっては最悪の馬場状態。よほど強靭な体幹、バランス感覚が備わっていなければ安定した走行フォームを維持することは出来ない。「ゴールドシップの産駒らしい繊細な部分もありますが、芯の部分ではどっしりと構えたようなところがあります。やんちゃもするけど、それは許容範囲。それよりも走り出すと集中力が増す」と八嶋社長が話していたようにまっすぐに前を向き、前を行く馬を追いかける。

そして、坂路コースへ。撮影ポイントからスタート地点を見ることはできないが、ここでは僚馬と並んで坂を駆け上がってくる。その蹄はしっかりとウッドチップ坂路をとらえて前へと進む。まだまだ余裕を残して3ハロン42秒をマークし、最後の1ハロンは12秒台を計時していた。それでいてケロリとしているところが頼もしい。

「ゴージャスが不思議なところは、しなやかなフットワークで素軽いスピードを感じさせながらも、乳酸値検査の結果では数値が思ったほど上がってこないのです。自分の感覚でいえばゴージャスのような走りは短距離のスピード馬なのですが、検査の数字はステイヤーに近いことを示しているんです」と八嶋社長が首をひねる。ゴールドシップ産駒が長距離レースに強い秘密が、この血中乳酸値検査の結果にあるのかもしれない。まばゆいばかりの馬体に目を奪われがちだが、しっかりしたフレーム一杯に詰め込まれた柔軟な筋肉、そして力強いアンダーライン。ゴージャスの馬体は、ゴールドシップのそれが良く表現されているように思う。ちょっとだけ違うのは、似て非なる毛色だけだ。

会報誌未公開画像

そして今回のレポートには後日談もある。取材を行った4月中旬には「まだ具体的な話はまったくありませんが、早ければゴールデンウィークにもトレセン近くへと移動させたい。それだけのことは積み重ねてきた」と話していた八嶋社長だったが、その言葉をこの原稿にまとめようという矢先に「移動が決まりました」との一報が。おそらく、この会報誌がみなさまのお手元に届く頃は、その白い馬体はもう津軽海峡を越えて次のステージへと力強く歩を進めているはずだ。

「もう間もなくここを旅立つ事になりますが、ここまでとても順調にメニューをこなすことができました。注目度の高さは重々承知していますので、長い現役生活をおくってもらうためにも、まず1勝。この馬のおかげで、たくさんの会員さんが牧場まで足を運んでくれましたし、たくさんの方に見守られていることを実感させてもらいました。感謝しかありません」と八嶋社長が結ぶ。原田さんも「たくさんの人が、この馬のレースを楽しみにしてくれています。そんな馬に携われたことの幸せを忘れずに、とにかく無事に怪我させることなく送り出したい」と表情を引き締めた。

ゴージャスはそんな2人に見守られながら、ここヤシ・レーシングランチで、純白に輝く美しい馬体を躍動させている。

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