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サトノネネ17(ノヴァエラ)スペシャルレポート

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種牡馬エピファネイアが、そのヴェールを脱ぎつつある。6月は14頭をデビューさせて2勝2着2回3着2回。7月は13頭がデビューして2勝2着5回3着3回。気が付けば、新種牡馬という枠を超えた2歳総合サイアーランキングで同馬よりも上位にランクされているのは唯一の重賞を勝ったキズナのほかは、ディープインパクトとダイワメジャーのみ。(7月末日現在)。新種牡馬のキズナを除けば、いずれも2歳チャンピオンサイアーの経験馬だ。そんな前途洋々な新種牡馬の初年度産駒らしく“新時代”を意味する馬名を与えられた「ノヴァエラ」は、北海道浦河町の吉澤ステーブルで競走馬への階段を駆け上がっている。

同ステーブルの鷲尾健一マネージャーによれば「当ステーブルには他にもエピファネイアの仔は何頭かおりますが、総じていえることは少なくとも先細りの早熟タイプではないということです。もちろん、早期にデビューできる馬もいますし、エピファネイア自身のように馬格に恵まれた馬もいますので、その中にはダート競馬に適性があるような馬も出てくるとは思いますが、ノヴァエラに関していえば素軽いフットワークで坂路を駆け上がってくれることから、芝向きのスピードタイプだと考えています」と期待している。

この日は、同ステーブルで10年以上のキャリアを誇る騎乗スタッフの武藤さんが騎乗。1周230mという屋根付きウッドチップ周回コースを使い、ダクとキャンターを4周ずつ。これだけで距離に直せば、約2000mだ。馬の行く気にまかせると加速しそうになるところを、武藤さんが懸命になだめている。

その後はクールダウンもかねてBTC軽種馬育成調教センターへと常歩で移動し、直線2000mのグラス(芝)馬場でキャンター。ここでも騎乗者は併走する馬と歩調をあわせようと懸命に抑えている。ここはスピード調教の場ではなく、正しいフォームを教える場だ。騎乗者が重心を後ろに下げて後躯を深く踏み込ませるフォームを教え込んでいる。その甲斐あって加速するに従い重心が下がり、後脚が深く入ると今度はスピードの違いで他馬を追い抜いてしまう。それは、我慢させることにならないので、チラチラと横を見ながら、馬に我慢することを教えている。

「速い時計を出そうと思えば、出せる馬。しかし、今のこの馬には、その必要がない」という鷲尾マネージャーの言葉を思い出す。その理由は、まだ本当の意味で体力が備わっていないからだ。

「強い調教負荷をかけたときに少し飼葉食いが落ちることがあるのですが、それ以外は残さずに全部食べてくれます。しかし、食べた分がなかなか身になってこない。それは、馬が成長期にあるからだと考えています。人間も、中学生、高校生くらいの頃って、いくら食べても太れない子がいると思いますが、同じことです」という。ただし、これは時間がすべてを解決してくれること。言葉を変えれば内臓の働きがよく、新陳代謝が優れているということなのだ。

その後は屋内1000mの屋根付きウッドチップ馬場に移動し、坂路を軽快に駆け上がった。備えられた電光掲示板に表示された時計は3ハロンで41秒程度。最後1ハロンは13秒1。これを持ったままでマークした。

「以前は落ち着きがないイメージでしたが、だいぶ解消されて動きそのものが良くなってきました。今日は芝馬場でも坂路でも、素軽い動きでスピード感がありましたよ」と武藤さん。手綱から伝わる力強さに、成長の手応えを感じているようだ。その証拠に馬房に戻ったノヴァエラはすっかりと息が整い、汗もほとんどかいていない。馬自身が現状の調教メニューに満足していないのは明らかだが、だからと言って馬が思うままに走らせれば良いというものではない。今、必要なのは競走馬として生まれたサラブレッドが競馬場で持てる力を発揮させるためのトレーニングだ。我慢を覚えさせることもそのひとつ。もって生まれた本能のままに、闘争心あふれる走りを抑える我慢。それは「成熟を待つ」という言葉に置き換えても良いのかもしれない。馬に備わっている体力以上の負荷を与えないことにも繋がってくる。

鷲尾マネージャーも、動きそのものには満足しているが「今の体をキープしながら、今日の走りを続けていくことが、これからもう1歩先に進めるための課題だと思います」と慎重な姿勢を崩さない。競走馬である以上、レーシングカレンダーを見ながらのトレーニングも必要だろうが、今はまだその時期ではない。何しろ、未勝利戦はまだ1年以上先まで用意してくれているからだ。その課題をクリアした先にはトレセンへの移動、そしてデビューが待っている。

父エピファネイアがジャパンカップを圧倒的な強さで制し、ワールドレースホースランキング129のレーティングを与えられたのは4歳時。これは、全部門を通した2番目の数字で、芝の長距離部門に関して言えば堂々の1位。世界チャンピオンステイヤーの称号を得ている。エピファネイア自身2歳競馬は3戦3勝で、半弟のリオンディーズと、サートゥルナーリアは2歳G1勝ち馬。これだけ聞くと仕上がりの早い血統にも見えるが、エピファネイアの初出走は10月末で、リオンディーズは11月22日。おそらくだが、何かのきっかけで一気に上昇気流に乗るような、そんなタイプなのだろう。

一方、母サトノネネも2歳10月に京都競馬場の芝1600m新馬戦に優勝。このとき、馬体重は現在のノヴァエラとほぼ同じ452kgだった。しかし、その後は馬体減に悩まされて思うような結果を残せず、ようやく体重が増えて成績が安定してきたのは4歳夏のことだった。母サトノネネの半弟レッドルドラが芝コースで連勝したのは4歳夏。半妹レッドベリンダが初めて特別戦に勝ったのは5歳7月。こうした血統背景からも、サトノネネの初仔となるノヴァエラには、まだまだ成長の余地があると考えるのが自然だろう。

そんなノヴァエラを「腰が強い馬です。背中のラインは父親ゆずり」と鷲尾マネージャーは評している。芝のスピードタイプだと言い、言外に豊かな将来を匂わせてくれる。しかし、今は我慢のとき。そして、成熟のときは突然にやってくる。強い調教負荷を与えたのちに、体が減らなければ、それはゴーサインだ。もしかしたら、それはこの会報がみなさまの手元に届く前かもしれないし、暑さがピークを越した頃かもしれない。それは誰にも分からないことだが、ノヴァエラには豊かな未来が広がっているのは容易に想像できる。

7月末現在、デビューしたエピファネイア産駒27頭のうち、本馬と同じく母の父にディープインパクトを持つ馬は2頭。7月20日に福島競馬で勝ちあがったグライユル(牝、母オールウェイズラブ)と7月7日の同競馬で2着となったシュルルヴァン(牝、母スヴァラッシー)。いずれも牝馬というのが心強い。

偉大なる種牡馬の引退、急逝が伝えられ、競馬が、そして血統が新しい時代を迎えようとしている。ノヴァエラが、新しい時代を切り拓く、その一翼となってくれることを期待したい。