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ナックオフィス17(プリンセスララア)スペシャルレポート

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「あらゆるサラブレッドには可能性があると思うのです。自分たちの仕事は、それを引き出してあげること」。そういうのは、現在プリンセスララアの育成を担当してくれている育成牧場「チームプレアデス」の星野純一代表だ。かつて、ホッカイドウ競馬の騎手として活躍。シャーペンアイルとのコンビで3歳三冠競走のひとつ「王冠賞」を制するなど通算300勝以上の勝ち星を記録したほか、当時ダートグレード競走だったダービーグランプリで同馬を3着に導いたり、札幌競馬場で行われた特別指定交流競走「利尻特別」で12頭中11番人気ニセンネンノオトコを2着に健闘させたりもした。「王冠賞を勝ったときは12頭中12番人気でした。せっかくもらったチャンスなので、何とかしたいと思って、それまでほとんど逃げたことがなかった馬で逃げたのです。それが良かったのかもしれません」と当時を振り返るが、そうした精神が星野さん率いるチームプレアデスには宿っている。

「プリンセスララアが移動してきたのは11月です。この馬の兄姉はほとんど扱わせてもらっていますので、血統的には良く知る1頭でした」。共通しているのは、成長がゆっくりで、精神的にも、馬体的にも2歳競馬向きではないということ。「これまで中央競馬でデビューし、勝ちあがった3頭の兄姉はすべてが3歳になってからデビューした馬でした。逆に言えば、姉のセイラも含めてタフに長く活躍してくれるファミリーでもあるのです」と星野さん。

現役活躍馬ナリス(牝、父ディープブリランテ)は今年の1月にデビューして、同年2月に初勝利。8月末現在ですでに8戦を消化し2着2回3着2回。2014年にデビューした姉マチルダ(牝、父ストラヴィンスキー)も初めて先頭でゴールを駆け抜けたのはデビュー4戦目となる3歳7月の中京競馬だったが、5歳秋に引退するまでに24戦を戦い抜いた。JRAで5勝をあげ、のちにホッカイドウ競馬で重賞競走を勝つシャア(牡、父ツルマルボーイ)にいたっては3歳3月のデビュー戦から7歳暮れまでに48戦。また、ホッカイドウ競馬からデビューしてのちにJRAの準オープン級で活躍してくれたセイラ(牝、父アッミラーレ)もまた、7歳春までに40戦以上のレースで5度の先頭ゴールインを経験している。

決して、派手ではないかもしれないし、今流ではないかもしれないが、それもまた“個性”。そんな個性を知るスタッフに見守られているのは、プリンセスララアにとっては心強い限りだ。「ナックオフィスの仔は慣れておりますが、スピルバーグの仔を扱わせてもらうのは初めてでした。現役時代の成績からも産駒は仕上がりの早いタイプではないと思っていましたが、プリンセスララアもまだまだこれからの馬だと思います」と星野代表。

父スピルバーグは2019年8月現在、ディープインパクト産駒として唯一、天皇賞・秋を勝った馬だ。重賞競走未勝利の身で挑んだ5歳秋の天皇賞・秋で17頭の重賞勝馬を相手に、出走メンバー中、最速の上がりタイムで優勝している。比較的早熟タイプが多いディープインパクト産駒にあっては異色の存在ともいえ、2019年からデビューしている初年度産駒も、その始動はややゆっくりに見える。そんな両親の血を引くプリンセスララアだが「性格的には、これまでの兄姉と比較して賢い一面がありましたので、他の馬と比べても馴致はスムーズでした。ただし、調教をスタートさせてからピリッとした面が表面化するあたりは、やはりナックオフィスの仔らしいところです。これまでの産駒は、競走での脚質は追い込みタイプが多かったのですが、兄姉に比べて前進気勢が強い分、比較的前の位置で競馬が出来るかもしれません」。それでも、血統のイメージどおりに馬体の成長はゆっくりだった。それゆえに「チームプレアデス流」が存分に発揮されている。

与えられた時間を使って、ダートトラックコース、1600mの直線コースに屋内ウッドチップ坂路。ときにはグラス馬場を経験させるなど、BTC軽種馬育成調教センターのあらゆる施設を使って個性を探りながら競走馬としての資質を磨いている。「同期の馬と比べ、当場への入厩は遅れましたが、夏前にはほかの馬と同メニューをこなすくらいにはなりましたし、ペースを上げても楽に対応してくれました」。誤算といえるか分からないが、想定外だったのは、この時期になっても馬体の成長が、兄姉と比較してもゆっくりだったことだ。「熱を出したり、脚元に疲れが出ていたわけではありませんので、調教進度を進めようと思えば対応してくれると思いましたが、体重が増えてこなかったのです。悩みましたが、飼い葉などは普通に食べてくれますので、調教師とも相談して馬体の成長を待つことにしました」。一定水準のペースを保ちながら、我慢の日々。結果、わずかながらも体重は増えてきたものの、体高や胸囲には大きな変化が見られなかったので、再びデビューへ向けてのメニューを再開させている。

現在は、屋内坂路と1600mの直線コースを併用したメニューが組まれ、屋内坂路では16秒~14.8秒~13.7秒をマーク。8月は浦河地区も猛暑に見舞われたためにペースを落としたが、それでも連日キャンターで乗りこまれ、そのうえで週に1度はハロン15秒程度の追い切りを休まずに行っている。

「うちで育成させてもらい、ダイヤモンドSを勝ったトゥインクルも牡馬としては小柄な馬でしたが、芯がしっかりしていました。プリンセスララアも、いたって元気ですが、本当の意味で芯がしっかりとしてくれば自信を持って送り出すことができます」と馬体重とにらめっこしながらゴーサイン待ちの日々を送っている。

競走馬には、ふとしたことで花開く個性がある。この夏は、とくにそれを感じさせられるケースが多いようにも見える。例えば、当歳募集馬にラインナップされたウーマンインレッド19の兄であるライオンボス。約7ヶ月の休み明けから復帰して、芝で、ダートで2戦連続しんがり負け。それが新潟競馬場の直線コースという舞台を与えられたら3連勝で重賞タイトルを手にした。エルムステークスを勝ったモズアトラクションもそうだ。デビューして、芝コースばかりで10連敗。番組から3歳未勝利戦が無くなって選ばれたのは2階級上の1000万円以下級のダート戦。ここで4着と健闘したことで、以降は主戦場をダートコースに移して以降は5戦4勝と一気にオープン級へと駆け上がった。

結局のところ、競馬というのは隠された個性の探りあいなのではないか、とそう思う。血統に裏づけされた成長力と、数多くのレースをこなせる体力。そんな武器を持つプリンセスララアの小さな馬体に可能性という夢が凝縮されているのだ。