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ナスカ24スペシャルレポート

募集馬情報

「ひと言で言えば、頭の良い馬。でもそれは、例えば物覚えが良いとか真面目に走ってくれるとか、人間にとって都合の良い賢さではなく、こちら側を試してくるような賢さです」と、ナスカ24の寸評で口火を切ったのは、パッショーネを率いる西野代表。パッショーネは、一昨年に青葉賞を勝ったシュガークンを送り出し、昨年もデビューから3連勝で芦ノ湖特別に勝ったグーテンベルクやピエマンソンの嵯峨野特別優勝などJRAで34勝をマーク。地方競馬もあわせれば、育成馬による年間100勝超も記録している育成牧場だ。また、育成馬ではないが休養で預かったヒストリーメイカーは暮れの東海ゴールドカップに優勝し、11歳(当時)での重賞制覇を成し遂げており、当場の優れた管理スキルを実感させる。

まずは、ナスカ24の血統背景をおさらいしておきたい。配合的には半姉アロマティコ(父キングカメハメハ)と似るところもあるが、父がルーラーシップに変わった事によって、祖母アンデスレディーと、父の祖母ダイナカールが、ともに「父ノーザンテースト、母の父ガーサント」という組み合わせとなった。結果的にノーザンテースト4×3、ガーサント5×4、そこにサンデーサイレンスとキングカメハメハ、トニービンが加わって、血統全体がチャンピオンサイアーで埋め尽くされている。やや冒険的で、意欲的な配合といえよう。

血統面の特徴は馬体にも表れている。写真でご確認いただけるように、まだ成長期にありながらも、しっかりとした腹袋には父ルーラーシップの母系に入るトニービンが見え隠れする。大きな肩とボリューム感に満ちたトモを持ち、歩かせると、柔らかい繋を備える前肢がすっと伸びて、後肢の踏み込みが力強い。クビを上手に使い、可動域の広い股関節から生み出される大きなストライドは安定感が抜群だ。

そんな本馬の現況について、あらためて西野代表にうかがった。「4月生まれという事もあって、まだ心身が子供なのだと思います。自分からハミをとって走ろうというのではなく、人間に言われるから仕方なく走っている感じです。でも、どこか悪いわけではなく、馬はむしろ健康。冬になっても毛ツヤはピカピカで、飼葉もしっかりと食べてくれます。馬体のバランスが良く、歩かせると、とてもしなやかで柔らかい動きをします。ただ、今の段階では、気持ちが走る方向に向いていない。闘争心を掻き立てるために併せ馬をしたり、ほかの馬を後ろから追いかけたりしているのですが。走っているときの集中力が続かないのです。良いものを持っているだけに、ちょっともったいない気がします」と残念そうに笑う。

それでも競走馬にとって不可欠な負けん気の強さは持ち合わせており、調教中に併走状態になると、耳を絞って隣の馬を威嚇するようなシーンも。そのあたりの事は、以前からレポートさせてもらっているとおりだが、人間に例えるならば、思春期にありがちな反抗期といったところだろうか。だが、こうした気の強さは、心身が完成期を迎えたあかつきには、必ずや良い方向に向かってくれるはずだ。

そういった不安定な精神面の成長を期待して、昨年は初期馴致を終えた段階でいちど牧場に戻してリフレッシュさせた。また年明け早々には「合宿」と西野代表が表現する札幌市内のモモセライディングファームへの〝留学〟も経験している。これは、いつもと異なる環境に置く事で精神力を養うと同時に、馬術運動を取り入れる事でより良いフォームを身につけられるという、一挙両得を狙った当場独自のメソッドだ。

さて、取材当日の調教パートナーを務めたのは、最もナスカ24の背中を知るスタッフの小澤さん。「身体が柔らかく、馬上のバランスが良いから、馬への負担が少ない。成長期にある馬を無理なく自然に正しい方向へと導いてくれる騎乗者です」と西野代表が深い信頼を寄せるスタッフだ。小澤さんは「現状では、決して乗りやすくはないですが、走りには安定感があります。どんな馬でも苦しくなると上下左右に逃げようとするのですが、この馬は、若干の左右差はあるものの、変な方向に逃げようとする事はほとんどありません。体幹がしっかりしているのだと思います」と愛馬の現況を説明。「もちろん、育成牧場として今日しっかり走らせる事も大事ですが、早くから人間が求めすぎてしまうと成長期にある馬にとって負担になってしまう場合もあるのです。だから、今日より明日、明日よりも明後日。一歩ずつ階段を登るように馬を育てていきたい。本当の勝負はここではなくて競馬場なのですから」と噛みしめるように話し、馬上の人となった。

この日のメニューは屋内角馬場でのハッキングキャンター4000mと屋内坂路を1本で、ハロン15秒程度を目安にするという。ハッキングキャンターとは、スピードを求めるのではなく、ゆっくりと大きなフォームで走らせる事で体力の強化を目的とする。1完歩ごとに馬を押し出さなければならないため、馬もしんどいが、人間も苦しい。右手前で2000m、そして左手前で2000m。屋内角馬場を大きく使っての輪乗りから、ショートカットするように巻き乗りへ、途中で馬の順序を入れ替えながら、それらを交互に繰り返す。地味で根気が求められる作業だが、基礎体力を養い、前進気勢を促す上では効果的な調教方法だ。ナスカ24は促されながら少し面倒臭そうに走る。気持ちの面はまだまだであるが、体力は十分にあるので、今後はさらに距離を延ばしていく予定だという。

西野代表は「今年は、とくに牝馬に関しては例年よりも坂路の本数を減らし、余裕を持たせた調教を意識していますが、ナスカ24に関して言えば、いかにして走っているときの集中力を持続させるかがテーマになりそうです。現状では、歩いている時の姿と、走っている時のフォームがまったくリンクしない。だから、走る事が苦しいというイメージを与えたくない」と続けた。

ハッキングキャンターを終えて屋内馬場から出てきた本馬が吐き出す白い息は、僚馬に比べて明らかに少ない。それは「本気で走っていないから」というよりも、優れた心肺機能がゆえではないだろうか。そして、坂路コースへと向かった。かつて、キタサンブラックも駆け上がったという屋内坂路を、3頭併せの1番外で力強く駆け上ってくる。常歩運動と同じく、ぶれる事ない走りを披露してくれた。調教を終えた後、馬房に戻るやいなや、人間を押しのけるようにして、まだ用意ができていない飼葉桶に顔を突っ込んだ旺盛な食欲が印象的だった。

インタビューの終盤、「今日の坂路調教は、スタートからやる気を出してくれたのですが、やはり途中で集中力が切れてしまいました。でも、少しずつではありますが、我慢できるようになっていると思います」と小澤さんが振り返る。西野代表も「最初からすべてが優等生という馬は、ほとんどいません。心が成長すれば身体がそれについていこうとしますし、身体が成長すれば心も大人になる。個人的な持論ですけど、頭の良い馬って運動神経の良い馬が多いと思っています。この馬の体力、気の強さが走る方向に向いたときは、すごい馬になると思う。色々な方法を試しながら、それを待つのも自分たちの仕事。できない事をさせるのではなく、今日できる事を今日のうちに。それまでは、焦らずに、かつしっかりと基礎体力作りに励みたい」と、本馬の持つ豊かな資質を信じつつ、日々のトレーニングに励んでいる。

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