
ローレルリネージは、パッショーネ西野代表の言葉を借りると「心身が健康な優等生」との事である。生産牧場時代からケガや病気とは無縁の健康優良児。それは育成に入ってからも変わる事なく、ここまで順調にメニューをこなしてきた。「もちろん、牡馬ですから闘争心みたいなものや、初めて目にするようなものに対する警戒心は持ち合わせています。ただ、そう言った事が悪い方向に向きそうな感じはなく、基本的には人が好きな馬だと思います」と言葉を続けてくれた。そんな本馬をアスリートとして見たときには「溜めて瞬発力を武器にするというよりも、徐々に加速して最後までしっかりと走りきるようなイメージです。血統どおりに、短距離というよりもダートの中距離を先行して押しきるような、そんなレースがイメージできる馬。持久力勝負に強そうな雰囲気があります。現状で大きな課題は見当たらない」という。ゲートに関しても「通過までは全く問題ありませんし、普段の様子からしても、駐立やスタートでうまくいかないとは思いません。今後は、夏の札幌デビューを視野に、今持っているものをそのまま伸ばしていければ良いと思っています」と充実している現状に太鼓判を押してくれた。

取材当日、馬上の人となったのは生産者ハシモトファームの橋本雄太社長だった。高校卒業後、ノーザンファームの育成部門で10年。「自分が入社した時に携わったのがシャイニングレイ(ホープフルS)やクルーガー(マイラーズC)、ベルーフ(京成杯)といった馬たちでした」。そういった数々の名馬たちから経験と自信をもらい、5年ほど前に家業を継ぐために実家であるハシモトファームに戻ってきた。現在は配合段階から積極的に取り組み、「勝ち上がり率にこだわりたいそのために必要なものは栄養と運動、そして休養だと考えています。私は生産者ですから、基本は放牧という名の運動になりますが、馬の状態を見極めて休ませるときにはしっかりと休ませ、そして適切な栄養管理による強い馬づくりを目指したい」と意気込んでいる。
そんなハシモト社長は、多忙な日々を過ごしながらも、地元の乗馬クラブで少年団の指導員をしつつ、自らも馬術大会社長は、多忙な日々を過ごしながらも、地元の乗馬クラブで少年団の指導員をしつつ、自らも馬術大会に出場。昨年はシャンボールナイト(障害3勝含むJRA5勝馬)とのコンビで、RRC2025障害馬術競技北海道大会に出場し、見事に減点ゼロ。6位入賞を果たしている現役ライダーだ。この日は『西野代表から声をかけられたから』と少し照れたような表情だったが「生産馬とはいえ、ローレルリネージに乗るのは初めてです」と、やや緊張した面持ちでコースへと向かう。こうした試みは初めてではなく、実はデビュー前のジョディーズマロンにも、ここパッショーネで騎乗経験がある。「育成分野に長くいた事もあって、見た目だけでは分からない馬の性格や特徴など、乗って初めてわかる事もあると思います。こうした時間は、とても貴重なもの。この経験を配合や育成などに生かして次世代の馬たちに繋ぎたい」と、言いながらも楽しそうに馬装にいそしむ。一方、普段はせわしなく馬房の中で動き回っているローレルリネージも、ハシモト社長との再開を懐かしむように、じっと身を委ねていたのが印象的だ。

この日のメニューはウォーミングアップのハッキングからの屋外ダート坂路2本。例年よりも雪解けが早く、開放されたばかりの全長760m、最大傾斜角度4%の坂路を力強いピッチ走法で駆け上がる。「最近はこの馬に騎乗する事が多い」という西野代表が、今日は外から、その走りを確認する。「この馬は屋内ウッドチップ坂路よりも、屋外ダート坂路のほうが動きます。身体に似合わず、パワフルな動きをします」と説明してくれ、1本目は15-15。2本目はさらにスピードアップさせて最後の1ハロンは13秒台でフィニッシュした。「明日は筋肉痛かもしれません。僕が」とハシモト社長の弾ける笑顔が、ローレルリネージと過ごした時間が充実していた事を雄弁に物語る。しかし、一方のローレルリネージはケロッとした顔でハシモト社長に甘えてくる始末。まだまだ物足りなさそうだ。「血統イメージ通りのパワータイプ。トップスピードに乗るまでの時間が短く、そのスピードを長く維持できる心肺機能の強さがあります。もともと自信があるからクラブへの提供を決めた馬ですが、その自信が確信に変わりました」と手綱を通した感想を口にした。

母ファービヨンドは、NAR年度代表馬4回フリオーソの半妹。さらにさかのぼれば、曾祖母のバーガーは、愛2000ギニーなど6か国でG1競走9勝トリプティクと1歳違いの全姉妹という血統。英愛ダービー、キングジョージに勝って種牡馬として輸入されたジェネラスや凱旋門賞連覇のトレヴなどと同ファミリーで、日本においてもタワーオブロンドンやディーマジェスティ、オースミタイクーン、オセアグレイトなどの活躍を送り続けている名門ファミリー。2016年の繁殖セールにファービヨンドにとって第2仔となるパイロ産駒を受胎して上場されたところを、ハシモトファームが購入した。「生産馬であるフリオーソの妹だから、愛着はひとしお。どうしても欲しかった馬。予算内で買う事ができて嬉しい」と、父である当時の橋本浩社長から話を聞いた事を思い出した。
現役時代のファービヨンドは先行力を武器に10戦して、うち7回で掲示板を確保する堅実派だった。そこにパワー自慢のマインドユアビスケッツを配してさらなるパワーアップを狙った。「マインドユアビスケッツは、ナダルのように圧倒的なボディバランスの持ち主ではありませんが、狂いのない骨格に筋肉がしっかりと備わっています。母系の特徴であるダート適性の高さを伸ばし、ファービヨンドに足りないフレームバランスを補ってくれる事を期待しました」とハシモト社長は理由を説明し「生まれた時は、ほぼイメージ通りでした」とニッコリ。牧場時代の事を尋ねると「とても元気な馬。離乳前から動くのが大好きで、もう少し落ち着いてくれたら良いのにと思った事もあります」と頼もしそうに言う。
父マインドユアビスケッツは2022年の総合ファーストシーズンチャンピオンサイアー。現役時代は強烈な瞬発力を武器としてダート短距離で活躍したが、産駒はデルマソトガケ(全日本2歳優駿、UAEダービー、ブリダーズCクラシック2着)、ホウオウビスケッツ(天皇賞・秋3着)などダート芝の両方で活躍馬を送り出している。

「提供馬は現役でペルフェツィオーネが頑張ってくれていますが、もっと成績を出したいです。この馬は5月生まれですから、まだまだ成長の余地を残す中で、ここまでの動きができる馬。東田調教師とはノーザンファーム時代の同期生。調教師試験に合格したあと、わざわざ牧場まで足を運んでいただきました。真面目な性格で、気心も知れており、安心して馬を任せる事ができます」と全幅の信頼を置いている。若いトライアングルが織りなす期待の良血馬に期待が高まる。

