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ゼルノードゥス(フルマークス23)スペシャルレポート

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本稿の主役であるゼルノードゥスがデビューを目指して調教を重ねる様子を取材すべく、「大山(だいせん)ヒルズ」へ赴いた。米子市中心部から車で30分ほど走ると車窓から見えてくるのが、雄大かつ美しい稜線を誇る名峰大山である。その山裾に位置し、ひときわ存在感を放つのが「大山ヒルズ」なのだ。

真夏の強い日差しが照り付けるが、木々の緑に包まれた広大な敷地に時折吹く風が心地よい。牧場事務所の前には、三冠馬コントレイルとリーディングサイアー・キズナの堂々たる像が静かに来訪者を出迎えている。思わず足を止めて見入ってしまう、印象的な佇まいである。

さっそく厩舎へ赴くと、ウォーキングマシンでの運動を終えたゼルノードゥスの馬装が始まった。落ち着いた様子で、どこか貫禄すら感じさせる。担当スタッフの細川隆太さんは、馬に涼をとらせながら、写真撮影に快く応じてくれた。細川さんは中央大学の陸上部出身で、中長距離の選手だったという。「走ることが好きで、今度は馬と一緒に走ってみたくなった」と、卒業後は馬の世界へ飛び込んだそうだ。細川さんは「ゼルノードゥスのことは母名フル“マークス”にちなんで呼びやすくアレンジした“マックス”と呼んでいます。すごく可愛いですよ」とほほ笑み、馬上の人となった。そんな“マックス”ことゼルノードゥスは、まるで大山の風景を味わうかのように、軽やかな足取りで進んでいく。

まずはダート周回コース800mをダクで1周してウォーミングアップ。2周目でキャンターに移ると気合いが乗り、全身からみなぎる気迫が伝わってくる。3周目に入り、さらにスピードを上げるように指示すると、前進気勢が出すぎたのか、細川さんが思わず手綱を強く引く場面も。酷暑のなかで闘志を燃やす姿には心を打たれるものがあった。

坂路で2頭併せの追い切りを行なうため、ダクでコースを下ってスタート地点へ向かう際には、一転して落ち着き払った様子でリズム良く馬蹄の音を響かせた。僚馬とともに坂路を登りはじめたゼルノードゥスは、大きなストライドで前肢を高く上げ、柔らかく力強いフォームで登坂していく。終盤の傾斜がきつくなる区間では、大きな負荷がかかる深いウッドチップをものともせずパワフルに駆け上がる。その雄姿からは、スピード能力と心肺機能の高さ、そして何より「走りたい」という強い意志が伝わってきた。

ちなみに、大山ヒルズの坂路コースは、数字の「6」を描くようにダートトラックへ接続されており、調教後はスムーズにクールダウンへ移行できる実に合理的な構造なのだ。

調教を終えたゼルノードゥスは、広大な敷地を常歩でクールダウンしつつ厩舎エリアに戻ってきた。細川さんは「基本的なメニューに加えて、長めのキャンターを取り入れて体力づくりを行なっています。普段は単走中心ですが、今日は15-15から終いを伸ばす形の併せ馬で、やや強めの負荷をかけました。動きは上々で、スピードの乗りがとても良かったです」と、その充実した走りに満足そうな表情を見せる。「ただ、ちょっと引っかかっちゃいましたね」と馬上で笑ったものの、「手前を自分でしっかり替えてくれるし、操作性は良好です」と褒める。

齋藤慎ディレクターも「良い動きでしたね。無理せず、きっちりラストを伸ばしてくれました。15.8-14.5-13.5ですから、時計も悪くないです。坂路は800mで、上がった後にダートコースでも流しぎみに行くので、実質1200mくらいでしょう。ちょうどいい稽古ができました」と満足げな笑みを見せた。

さらに、「やれば動く馬だけど、ここで動かしすぎて気持ちが高ぶってしまったら意味がない。余力を持たせて育成しています。牧場はトレセンと違って、同じ量を乗ってもリラックスして乗れる環境です。こちらにいても向こうにいてもカリカリしているようでは駄目で、逃げ場がないと。向こうで気持ちが入るが、こちらでは全然という馬が走ります。コントレイルにしても、キズナにしても走る馬はみんなそうです。トランセンドなんかは典型的で、うちでは15-15で一杯なのにトレセンでは猛時計を出すんです」と教えてくれるが、引き合いに出される馬がそうそうたる名馬ばかりなことに感銘を受けた。

本馬の気性面については「最初は前向きすぎて口向きに少し難しさがあったものの、今はまったく問題なし。操作性が良いです。やればしっかり動く馬だけど、単走ではふんわりと、併せ馬ではしっかりハミをとってくれる。牝馬はこれくらいがちょうどいいです」と齋藤ディレクターが評する。続けて「飼葉をしっかり食べてくれるのもありがたい。調教で引っかからない事と、食べてくれる事が一番大事です。ここで食べなくなったら、トレセンではもっと食べなくなりますから。この仔の場合、入場当初は少し余裕のある体つきだったけど、馬っぷりの良さが目立っていました。それに、動かしてみたら気が良くて体力もあったので、すぐに調教を進められました。うちの坂路は深くてきついけれど、すぐに対応してくれましたよ。さらに、最近は馬体が絞れて動きが軽くなりました」と話す。

細川さんも「北海道から移動してきたばかりの頃は、新しい環境に戸惑う場面もありましたが、今では先頭に立ってグイグイ動けるようになりました。以前は物見の癖があったと聞いていますが、こちらでは一度も見せていません。単走でもしっかりと調教をこなす事ができます。とても順調でこれといった不安は何もありません」と教えてくれた。おふたりの言葉から、本馬の心身ともに順調な成長がうかがえる。

さて、馬装を解かれたゼルノードゥスは軽い脚どりで洗い場へ向かう。バケツに勢いよく顔を突っ込んで水を飲む様子は、思わず笑みがこぼれるほど無邪気だ。そんな愛馬を見つめる細川さんの眼差しには、深い愛情がにじんでいた。シャワータイムになると手際良いケアに身を任せ、気持ち良さそうな表情を浮かべる。身体が乾いてからの写真撮影も、落ち着いた気性のおかげでスムーズに終えられた。馬房に戻るとすぐに飼葉桶に頭を突っ込み、一心不乱に朝の飼葉を食べはじめた。まさに“オンとオフの切り替えが上手なタイプ”らしく、調教中の闘志あふれる姿とのギャップが印象的で、大物感を漂わせる。

最後に、現状での課題と今後の展望をうかがった。細川さんは、「まだ多少の緩さはありますが、この時期の2歳馬なので当たり前です。筋肉量は十分です。暑さにも強いですし、調教後は大山の伏流水で身体を冷やしているので、夏バテする事なく体調も万全です。この先も順調なら、1カ月もすればデビューできる状態になると思います」と話す。齋藤ディレクターは「一生懸命に走る馬だけど、非常に扱いやすいので距離にも融通がききそうです。スピードがあるので、前々で押し切る競馬が合いそうです。早めに勝ち上がって2歳、3歳のときから楽しめればなと。馬格もあるし、現時点で注文をつけるところは特にありません。あとはゲートだけしっかり確認して、万全を期して送り出したいと思います」と締めくくってくれた。

充実した施設に加えて、高い志とスキルを併せ持つ優秀なスタッフがそろった環境でデビュー前の総仕上げをしてもらえるゼルノードゥスは、なんと恵まれているのだろう。デビューのあかつきには、大山ヒルズで研鑽を積み、まばゆいばかりの活躍を見せる先輩馬たちに、少しでも近づけるような走りを見せてくれるに違いない。

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