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ミコノキセキ22スペシャルレポート

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寒さが一時的に和らいだ2月中旬、北海道新冠町の日高軽種馬育成公社内に居を構えるパッショーネへ向かった。本稿の主役であるミコノキセキ22の調教後、機嫌の良さそうな西野城太郎代表が取材に応えてくれた。「育成担当牧場としては、この馬のセールスポイントをしっかりと会員の方々に伝えて喜びを共有したいですが、提供者としては自分の所有割合が減っていくのは少し複雑かなと思うようになりましたよ」と冗談交じりに現況を話す。その笑顔の向こう側には、飼葉桶に顔を突っ込んで一心不乱に食事をするミコノキセキ22がいる。「たった今、あれだけハードな調教を終えたばかりなのに、この馬の体力と食欲には本当にびっくりさせられます」とスタッフも目を丸くする。併せ馬のパートナーとなった馬が汗びっしょりでぐったりしてる側でケロッとした顔、そしてパンプアップされた背中の筋肉がすごい。

父はこの世代が初年度産駒となる期待の新種牡馬ブルドッグボス。現役時代はJRAで19戦7勝、NARで26戦7勝を挙げ、サウスヴィグラスやエスポワールシチー、ダノンレジェンドなど、多くの成功種牡馬を送り出している。JBCスプリントにも勝利し、2019年にはNAR年度代表馬に輝いたほか、2年連続で最優秀4歳以上牡馬、同最優秀短距離馬にも選ばれたトップスプリンターだ。

母系はサクラチヨノオー(1988年日本ダービー、1987年朝日杯3歳S)、サクラホクトオー(最優秀2歳牡馬)を筆頭に、数々の活躍馬を送り続ける名牝系スワンズウッドグローブ。近年でもラッキードリーム(JBC2歳優駿、ホッカイドウ競馬三冠)、そして今春の東京新聞杯を勝ったサクラトゥジュールなどを擁する名門ファミリーで、馴染みのあるところでは、実戦を経験しながら素軽さを増して芝コースで軽快なスピードを発揮し始めたレイムの半弟となる。「ブルドッグボスの4代母GoofedはLyphardの母なので、ミコノキセキの母父キンシャサノキセキにあるLyphardと母系クロスを持っているのも気に入ったポイントでした。Lyphardのクロスは日本の芝適性が高くて活躍馬が多く出ていますからね。また、愛着のある血統なので生まれて間もない頃に牧場で見せてもらったのですが、その時の印象はブルドッグボスの父ダイワメジャーの特徴がよく出ているなぁという事でした。骨量、筋肉量に恵まれ、そして何よりも兎頭(ととう)。あの顔のラインはダイワメジャーそのものでした」と代表が懐かしむ。

あれから、約1年半。本馬は西野代表の予想を超える成長ぶりを見せている。「とにかく食欲が凄いのです。そして吸収率が高い。与えた量以上とは言いませんが、ほぼすべてが身になっている印象で、1日でも調教を休むとすぐに太ってしまう。幸い、脚元に不安がないのでバリバリやっていますが、それでもどんどん体重が増えていくのです」と頼もし気に語る。

10000mハッキング、いわゆる“万ハック”が代名詞にもなっているパッショーネだが、“万ハック”に過度なこだわりを持っているわけではない。一番大切にしていることは、馬の個性を理解し、より実戦を想定した育成、調教だ。「もともと短距離タイプだとは思っていましたが、筋肉量が多い馬の割には乳酸値があまり上がってこなかったのです。息の入りも早いし、汗もあまりかかない。見た目だけでは分からないこともあるかもしれないと思い、数字で確認するためにプラスビタール社のスピード遺伝子検査をしたところ、やはりCCタイプ(短距離型)でした。このタイプは強い負荷をかけなくても筋肉量が増えていくので、(筋肉量を増やすために行う)ハッキングの距離を短くする代わりに、筋繊維を強くし、そして心肺機能を高めるような調教メニューに切り替えています」とのことである。

2月下旬のメニューは、ウォーミングアップ代わりに角馬場で約4000mのハッキングと、そして屋内坂路2本というもの。「この馬は、ゆっくり走らせると本当に乗り味が悪い。バランスの悪い動きをするから写真は撮らないでくださいね」と西野代表が悪戯っぽい笑みを浮かべて馬上の人となる。「おそらくだけど」と前置きしたうえで「その理由は、速筋と遅筋の割合比率が原因だと思います。この馬はゆっくり走るのが苦手なのです。その代わり、ハロン15秒くらいまでスピードを上げると、そこから馬に芯が入る」という。西野代表は育成時代のモーニンに騎乗していたそうで、同馬もゆっくりと走るのが苦手だったという。

改めて説明するまでもないと思うが、速筋とは収縮力が速い筋肉のこと。瞬間的に大きな力を生み出す筋肉のことで、その筋繊維を動かすためのエネルギーは酸素を必要としない。一方、遅筋を動かすためのエネルギーは酸素を必要とするため、ゆっくりだが持久力に優れるとされる。その違いは「無酸素運動」「有酸素運動」と表現されることもある。だから、という訳ではないのかもしれないが、ゆっくりと加速するのではなく、いきなりのトップスピード。馬が持っているパワーをロスなく推進力に変えるための調教だ。1本目が最後1ハロン15秒をやや切る程度で、2本目の最後は14秒フラット。5月生まれの2歳馬としてはかなりハードな内容だということをご理解いただけると思うが、単に速く走らせるだけではなく、蹴り上げるウッドチップがわざと顔に当たるようにパートナーの後ろを走ることも織り交ぜている。前を行く馬が蹴り上げるチップは、馬だけではなく騎乗者の顔にも容赦なく当たる。心配する筆者に「大きなチップが顔を直撃すると、まるで殴られたように腫れることもありますが、ここで経験したことは必ずレースで役に立つと思っています。それでもキックバックを嫌がる馬はいるのですが、経験させないよりはした方が良いに決まっている」とあっさり答えた。

そしてもうひとつの特徴は、坂路を上がり切ったあとなかなか止まってくれない気性だということ。ハッキングではダラダラ走っているのに、いざ坂路に入ってペースを上げるとものすごい気合いを出すのだ。

「スプリントレースで最も必要なのは、ダッシュ力と、それを持続させる心肺機能だと思います。なぜなら、ほとんどのレースはゴールに向かってラップが落ちるからです。そのために求められるものは1完歩目からのフルギャロップ。幸い、この馬は走ることに真面目なので、ゲートから最初の1ハロンを11秒台で行けるようになるまでしっかりと教え込み、その瞬間的なスピード、瞬発力とそのスピードを少しでも長く持続させるために必要な心肺機能を鍛えたいです」というプランを明かしてくれた。「3月中には屋内坂路で3本。4月に乗れば屋外坂路を使えるようになりますのでダッシュ力の強化を図ります」とのことで、そのあとは函館競馬場への直接入厩というプランも企てている。

会報誌未掲載画像

「血統からはダート向きと思われるかもしれませんが、半姉のレイムがそうであるように芝向きのスピードも感じさせてくれます。函館競馬場の短距離レースは芝なら1200m、ダートは1000m。どちらにしても必要なのはダッシュ力と心肺機能で、この馬は、それらを兼ね備えているはずです」と力強く結んでくれた。

そんな話をしているかたわらで、早くも空っぽになった飼葉桶の下に落ちている餌を拾って食べているミコノキセキ22の姿は、愛嬌と、それ以上に頼もしさを感じさせるものだった。食欲のみならず、馬体も体力も、そしてスピードも抜群な本馬が見せてくれるであろう活躍が、今から楽しみでならない。

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