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エイコーンドリーム(エイコーンウィル23)スペシャルレポート

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本稿で主役を務めるエイコーンドリームを取材するため、宇治田原優駿ステーブルを訪ねた。本誌422号の24ページに全景画像が掲載されていたので、その充実した施設と周囲をとりまく豊かな自然は読者諸氏の記憶にも新しいことと思う。正門を通って牧場事務所の駐車場に車をとめると、田中敦史マネージャーがいつものように笑顔で迎えてくれた。

厩舎エリアに入ると、馬より先に出迎えくれたのは猫だった。当場にはとにかく猫が多く、厩舎に住んでいる猫だけで15匹、そのほか牧場スタッフ寮にも数匹と、猫だらけ。「1カ月でキャットフードの巨大な袋がなくなります」と田中マネージャーが笑う。だが、実は馬の厩舎に猫がいるのはさほど珍しい事ではない。穀物が多く含まれる馬の飼料はネズミに狙われやすく、猫たちはそのネズミを追い払ってくれるありがたい存在なのだ。また、馬は小動物に対して優しく、身体に乗ってきても嫌がらずに大の仲良しとなるケースも稀にある。ノーザンテーストやメジロマックイーン、ステージチャンプやメイショウドトウと仲良しの猫についてはけっこう有名なエピソードや写真があるので、馬に加えて猫も愛する読者はぜひ調べてみてほしい。

閑話休題、ここで本馬の血統面についておさらいしておきたい。今年のゴドルフィンマイル(G2・UAE)で世界のトップホース2頭に続く3着に食い込んだカズペトシーンは、本馬が属するサンデーエイコーン牝系が世界レベルでも通用することを証明した。ほかにも2007年のBSN賞を制したワキノカイザーや、オープンで息長く活躍したタイムズアローが名を連ね、孫には2018年のマーチSを制したセンチュリオン、そして曾孫には交流重賞3勝を挙げ牝馬ダート路線の中心的存在となったアーテルアストレアなどを輩出し、「砂の名牝系」と呼ばれるまでに発展してきた。

さらにこの牝系とロベルト系種牡馬との相性は抜群で、JRAデビュー馬15頭中13頭が勝ち上がるという驚くべき実績を誇っており、まさに“超ニックス”といえよう。なかでも本馬の父ルヴァンスレーヴは、シンボリクリスエスを父に持つロベルト系にして、ダート路線の最高峰タイトルを総なめにして「砂の王者」と称された、2018年のJRA最優秀ダートホースだ。「砂の名牝系」×「砂の王者」という夢の配合が結実した本馬が、これからどんな走りを見せてくれるのか、楽しみでならない。

さて、当日のレポートに戻ろう。ウォーキングマシンでウォーミングアップを終えたエイコーンドリームが馬房へ戻ってきた。いつも本馬のお世話をしてくれている外国人スタッフが休みだったため、この日は馬装から調教、その後の手入れまで、スタッフの古戸剛太さんが担当してくれた。馬装中、大人しく従順な本馬の様子に感心していると、青山裕一調教主任が「北海道から移動してきたときに、前の育成先であるファンタスト木村牧場さんからは『うるさい面がある』と聞いていましたが、実際には新しい物事への理解が追いつかない際に一時的にテンパッてしまったもので、決して常にうるさい性格というわけではありません。環境に慣れてきてからは落ち着いて行動でき、安心できる状況下では素直さも見せています。今後も焦らず理解を積み重ねていくことで、さらに改善が見込めるでしょう。管理予定の河嶋先生にも、こういう感じの馬なので、いろいろと理解させながら進めたほうがいいとアドバイスを伝えさせてもらいました」と詳しく教えてくれた。

後日、青山主任の報告を受けた河嶋師にお話をうかがうと、「はじめての物事に対して弱いというというのは、決して悪い事ではありません。馬が不安になったときに人間を頼ってくれる事につながるので。何があってもドッシリと構えて我が道を行くというタイプのほうが、かえって扱いが大変という場合もあります」と説明してくれ、人馬のコミュニケーションについて勉強させていただいた。

さて、馬装を終えた古戸さんがエイコーンドリームにまたがり、厩舎を出て調教コースへと向かう。それまでは従順かつ大人しいという印象だった本馬が、なんだか楽しそうな表情となり、目がキラキラしてきたのに気づき、まるで「走れることが嬉しい」と思っているように見えた。

まずは1周500mの屋外ウッドチップコースに入ると、ダクからハッキングキャンターと徐々にスピードを上げて身体をほぐす。続いて1周1000mの屋外ダートコースをキャンターで2周し、最後に1000mの坂路コースを18秒ペースで登坂した。一時期、疲れがたまったので調教を緩め、そこから乗り戻している途上というが、しっかりと四肢を伸ばしてダイナミックな動きを披露してくれた。

厩舎へ戻った本馬の手入れを行ないながら、古戸さんは「牝馬としては馬格があるけど、成長途上の2歳なので身体はまだ細いです。でも、見た目よりもはるかにパワーがあります。私自身は久しぶりに騎乗したのですが、明らかに前回よりもパワーアップしていると感じました」と話す。「スピードで勝負するというよりは、パワー型な感じ。まだ馬が若いので、乗りだしの操作に難しい面があり、強く指示を入れるよりもリズムと流れで走らせたほうがスムーズですが、走りだしてしまえば素直で、扱いに大きく困るタイプではありません」と教えてくれた。

現状での課題について青山主任にうかがうと、「基礎体力の強化はまだ必要。ある程度のスピード調教はできると思うけど、じっくり長めに乗ると最後に苦しくなるような面がまだ残っています。今はフラットワーク2000mをキャンターで乗っているけど、3000mを楽にこなせる体力がついたら新馬戦に向けて段取りしていってもよいと思います。コース適性については、性格や走りの雰囲気、血統面からもダート1800m前後が有力と見ていますが、競馬場に入って気持ちの面でスイッチが変わる可能性も含め、今後の成長と経験を踏まえて最終判断していく予定です」とのことだ。そして「精神面と体力面のバランスを見ながら、ていねいに理解を積み重ねることで着実に良化が見込める段階にきています。動きは良く、心身ともに成長過程の段階にあるため、今後も成長に合わせて負荷と内容を調整しながら進めていきます」と総括してくれた。

芝でも通用しそうなスッキリとしたボディに柔らかなフットワークという長所を備えつつ、調教を積むごとに持ち前のパワーが増しており、ダートでこそ強みを発揮できるであろう血統背景をも併せ持つ本馬。まずは姉たちの戦績を超えるという“通過点”に到達し、充実が進む牝馬ダート路線での活躍を期待したい。

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